- 押え盛土工法はどのような仕組みで盛土を安定させるの?
- 軟弱地盤対策と地すべり対策で押え盛土の扱いは違うの?
- 押え盛土の高さや幅の決め方が知りたい。
押え盛土工法は「土を盛るだけ」に見えるため、簡単に思われがちな工法です。
しかし押え盛土は、配置位置や地下水の扱いを誤ると、斜面のすべりや地盤沈下を誘発することがあります。
そこでこの記事では、押え盛土工法の仕組み・適用場面・形状の考え方・注意点を解説します。
この記事を読むことで、押え盛土工法を採用できる条件と、設計・施工で確認すべき事項が理解できるようになります。
目次
押え盛土は土の重さでのり尻側のすべり抵抗を増やす工法
押え盛土工法は、本体盛土ののり尻側や地すべり土塊の末端部に盛土を行い、すべり破壊に対する安全性を高める工法です。
押え盛土工法は、杭やアンカーなどの構造物を使わず、土の重さだけで抵抗力を付加します。
押え盛土工法が使われる場面は、軟弱地盤上の盛土と地すべり斜面の2つに大別できます。
2つの場面は目的が似ていますが、根拠となる技術資料と検討の着眼点は異なります。
| 項目 | 軟弱地盤対策としての押え盛土工法 | 地すべり対策としての押え盛土工 |
|---|---|---|
| 主な技術資料 | 盛土等防災マニュアル「Ⅹ 軟弱地盤対策」、道路土工 軟弱地盤対策工指針 | 地すべり防止技術指針(国土交通省砂防部) |
| 目的 | 盛土端部の安定確保、側方地盤の変形の軽減 | 地すべり滑動力に抵抗する力の付加 |
| 設置位置 | 本体盛土の側方(のり尻側) | 地すべり土塊の末端部 |
| 工法の位置づけ | 安定対策を主とする軟弱地盤対策工 | 抑制工(国土交通省の指針)、斜面改良工(農林水産省の手引き) |
| 主な用途 | 用地に余裕がある場合、施工時の変状に対する応急対策 | 恒久対策、地すべり発生時の応急緊急対策 |
押え盛土工法で盛土や斜面が安定する理由
理由1:押え盛土の重さが抵抗モーメントとして働く
押え盛土工法は、すべりに抵抗するモーメントを増やすことで盛土の安定性を高めます。
円弧すべりでは、すべり円の中心よりのり尻側にある土の重さが、すべりを止める方向に働きます。
押え盛土工法は盛土幅を大きく広げるため、盛土のり面勾配を緩くした場合と同様の効果が期待できます。
理由2:特別な材料が不要で、速やかに効果を発揮できる
押え盛土工法は、材料を速やかに調達でき、直接的かつ速やかに効果を発現できる工法です。
上記の理由から、押え盛土工は地すべりの応急緊急対策としても多く用いられています。
押え盛土の高さ・幅・盛土量を決める考え方
押え盛土の形状は安定計算で決める
押え盛土の高さや幅は、安定計算によって決定します。
盛土等防災マニュアルでは、軟弱地盤上の盛土端部の安定を単一の円弧すべり面を想定した全応力法で検討するのが標準です。
ただし、盛土等防災マニュアルは安定計算の結果だけを重視しないよう求めています。
近隣や類似土質の施工実績・災害事例と照らし合わせて形状確認することが大切です。
押え盛土工法の注意点:下方斜面・地下水・基礎地盤を必ず確認する
押え盛土の荷重が別の問題を誘発する可能性もある
押え盛土の荷重は、盛土部の下方斜面に潜在する地すべりを誘発する場合があります。
押え盛土を計画する前に、下方に地すべりブロックが連続していないかを確認してください。
参考に、農林水産省の農地地すべり防止対策の技術書は、押え盛土工の適地となる条件を次のように示しています。
- 下方に地すべりブロックが連続せず、盛土荷重が地すべりを誘発するおそれがない
- 盛土の基礎地盤が堅固で、破壊や沈下の可能性が小さい
- 地すべりブロックが末端閉塞型の地形である
- 斜面の全体勾配が緩い、または斜面が凹地状の地形である
- 地形やすべり面の末端での勾配が緩い
地下水の出口をふさぐと背後の地下水位が上がる
押え盛土で地下水の出口がふさがれると、背後の地下水位が上昇して斜面が不安定になるおそれがあります。
特に旧沢筋などの凹地状の斜面は、表流水・地下水・湧水が集積しがちな地形です。
凹地状の斜面に押え盛土を行う場合は、十分な地表水・地下水処理が必要になります。
基礎地盤が軟弱だと押え盛土自体が沈下・崩壊する
押え盛土の法先に軟弱層が厚く分布する場合、沈下や地すべりが発生し、押え盛土そのものの安定性が損なわれる可能性があります。
押え盛土は抵抗力を付加する工法であるため、押え盛土自体が安定していなければ効果を発揮できません。
盛土等防災マニュアルでも、隣接地に家屋や重要な構造物がある場合、周辺地盤への影響を詳細に検討するよう求めています。
宅地造成で押え盛土を計画する場合は、隣接地の沈下や側方変位についても検討しましょう。
用地・材料・法令も確認する
押え盛土工法では、地盤条件以外にも次の事項の確認が必要です。
- 用地:押え盛土工法は盛土敷幅を広げるため、のり尻側に十分な用地が必要です。
- 盛土材料:排土材の流用などで土質強度が良好でない場合は、盛土の構造や勾配に十分な配慮が求められます。
- 法令:盛土規制法の規制区域内では、押さえ盛土も高さによっては許可の対象になります。
まとめ

以上。本記事では押え盛土工法の仕組み・適用場面・形状の考え方・注意点を解説しました。
本記事のまとめは以下のとおりです。
- 押え盛土工法は、のり尻側や地すべり末端部に土を載せ、すべりに抵抗する力を増やす対策
- 軟弱地盤対策では盛土等防災マニュアル、地すべり対策では地すべり防止技術指針を主な根拠として区別する
- 下方斜面の地すべり、地下水の出口、基礎地盤の軟弱層によっては、押え盛土が別の問題を誘発する可能性がある
押え盛土工法を検討する際は、まず下方斜面・地下水・基礎地盤の状況を調査してください。
そのうえで他工法とも比較し、経済性や施工性安全性などの総合的な観点から最適な工法を決定しましょう。





