円弧すべり逆算法とは?切土斜面の安定性評価における考え方と解析手順

円弧すべりの逆算法とは何だろう?」

「通常の円弧すべり解析と何が違うの?」

「どのような場面で用いられる解析手法なの?」

このような疑問をお持ちではないでしょうか?

円弧すべりの逆算法は、切土斜面の安定性評価で用いられる解析手法です。

計画地周辺の自然地山から粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を逆算し、その強度定数を用いて計画切土斜面の安全率を評価します。

宅地造成では、原則として地山の土質に応じた安定勾配で切土を計画します。

そのため、円弧すべりの逆算法を適用する場面は多くありません。一方、地形条件や敷地条件などにより安定勾配を確保できず、より急な切土勾配を検討する必要がある場合には、有効な解析手法となります。

この記事では、円弧すべり逆算法の概要や通常の円弧すべり解析との違い、考え方、適用場面について、技術者向けに分かりやすく解説します。

目次
  1. 円弧すべり逆算法とは
    1. 切土斜面の安定性評価に用いられる解析手法
    2. 周辺の自然地山から強度定数を逆算する方法
    3. 逆算した強度定数で計画切土斜面を評価する
  2. 円弧すべり逆算法が必要な理由
    1. 土質試験だけでは設計定数を決めにくい
    2. 周辺地山の安定実績を設計に反映できる
    3. 地盤条件に応じた切土勾配を検討できる
  3. 円弧すべり逆算法の考え方
    1. 周辺の自然地山を安全率1.0と仮定する
    2. 安全率1.0となるc・φを逆算する
    3. 逆算したc・φを計画切土斜面へ適用する
  4. 円弧すべり逆算法の解析手順
    1. 周辺の自然地山の代表断面を設定する
    2. 地下水位や土層構成を設定する
    3. c・φを逆算する
    4. 計画切土断面の安全率を算出する
  5. 円弧すべり逆算法を適用する際の注意点
    1. 周辺地山と計画地の地質が同等であること
    2. 周辺地山が長期間安定していること
    3. 地下水位の設定が解析結果に影響する
    4. 地形改変や風化の影響を考慮する
  6. よくある質問
    1. 円弧すべり逆算法とは何ですか?
    2. なぜ周辺の自然地山を利用するのですか?
    3. 土質試験だけでは設計できませんか?
    4. 円弧すべり解析との違いは何ですか?
  7. まとめ
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土質 太郎

建設コンサルタントに長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

■保有資格
・地質調査技士(現場技術・管理部門)
・1級土木施工管理技士
・地盤品質判定士

円弧すべり逆算法とは

円弧すべり逆算法は、切土斜面の安定性を評価するために用いられる解析手法です。

一般的な円弧すべり解析では、土質試験などで求めた粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を用いて安全率を算出します。

一方、円弧すべり逆算法では、周辺の自然地山の安定状況からc・φを逆算し、その強度定数を用いて計画切土斜面の安全性を評価します。

宅地造成では、原則として地山の土質に応じた安定勾配で切土を計画します。そのため、逆算法を適用する場面は限定されますが、地形条件などにより安定勾配を確保できない場合には、有効な解析手法となります。

切土斜面の安定性評価に用いられる解析手法

円弧すべり逆算法は、切土斜面の安定性を確認するための解析手法です。

特に、標準的な安定勾配では計画が成立しない場合や、より急な切土勾配を採用する必要がある場合に利用されます。

周辺の自然地山が長期間安定している実績を設計へ反映できるため、実際の地盤条件に近い強度定数を設定できる点が特徴です。

周辺の自然地山から強度定数を逆算する方法

円弧すべり逆算法では、計画地周辺の安定した自然地山を対象とします。

その自然地山が安全率1.0(崩壊寸前)で成立していると仮定し、円弧すべり解析を繰り返しながら、成立条件を満たす粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を逆算します。

つまり、安全率を求める解析ではなく、安全率1.0となる強度定数を求める解析であることが、通常の円弧すべり解析との大きな違いです。

逆算した強度定数で計画切土斜面を評価する

逆算によって求めたc・φは、計画切土斜面の安定計算に使用します。

計画する切土勾配や法高を条件として円弧すべり解析を行い、所定の安全率を満足するか確認します。

安全率を満足しない場合は、切土勾配を緩くする、法高を見直す、抑止工を設けるなどの対策を検討します。

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円弧すべり逆算法が必要な理由

宅地造成では、原則として地山の土質に応じた安定勾配で切土を計画します。

そのため、多くの現場では円弧すべり逆算法を用いる必要はありません。

一方、敷地条件や周辺構造物との離隔などの制約から、安定勾配を確保できない場合があります。

このような場合に、周辺の自然地山の安定実績を利用して設計定数を設定し、計画切土斜面の安全性を確認する手法が円弧すべり逆算法です。

土質試験だけでは設計定数を決めにくい

円弧すべり解析では、粘着力(c)と内部摩擦角(φ)の設定が解析結果を大きく左右します。

これらは土質試験によって求められますが、自然地山は風化や亀裂、節理などの影響を受けており、採取した試料だけで地山全体の強度を表現できるとは限りません。

また、試料の採取位置や試験方法によって得られる値が変化することもあります。

このため、土質試験結果だけで設計定数を決定することが難しい場合があります。

周辺地山の安定実績を設計に反映できる

周辺の自然地山が長期間安定している場合、その斜面は実際の地盤条件を反映した状態で成立していると考えられます。

円弧すべり逆算法では、その自然地山が安全率1.0で成立していると仮定し、粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を逆算します。

室内試験だけでは評価しにくい風化や節理などの影響も含めて設計定数へ反映できる点が、この手法の特徴です。

地盤条件に応じた切土勾配を検討できる

逆算した強度定数を用いることで、計画している切土勾配が所定の安全率を満足するか確認できます。

その結果、安全率を満足しない場合は、切土勾配を緩くする、法高を低くする、小段を設けるなど、切土断面を見直すことになります。

一方、安全率を満足する場合は、その計画勾配で施工可能と判断できます。

このように、円弧すべり逆算法は周辺の自然地山の安定実績を設計へ反映し、計画切土斜面の安全性を個別に確認するための解析手法です。

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円弧すべり逆算法の考え方

円弧すべり逆算法では、計画地周辺にある安定した自然地山を基準として、地山の強度定数を設定します。

まず、自然地山が限界平衡状態にあると仮定し、安全率が1.0となる粘着力(c)と内部摩擦角(φ)の関係を求めます。

次に、逆算した強度定数を計画切土斜面へ適用し、必要な安全率を満足するか確認します。

周辺の自然地山を安全率1.0と仮定する

逆算の対象には、計画地と地質構成や風化状態が類似した周辺の自然地山を用います。

対象とする自然地山について円弧すべり解析を行い、現状の斜面が安全率1.0で成立していると仮定します。

安全率1.0は、すべりを生じさせる力と、それに抵抗する力が等しい限界平衡状態を表します。

実際の自然地山が常に安全率1.0であるという意味ではなく、強度定数を安全側に逆算するための解析上の仮定です。

対象斜面に崩壊跡や地すべり地形、湧水などが確認される場合は、安定した自然地山として扱うことが適切か慎重に検討する必要があります。

安全率1.0となるc・φを逆算する

自然地山の地形、地層構成、単位体積重量、地下水条件などを解析モデルへ反映し、安全率が1.0となる強度定数を求めます。

ただし、安全率1.0という条件だけでは、粘着力(c)と内部摩擦角(φ)の組合せを一意に決定できません。

そのため、土質試験結果や地質状況などを踏まえて一方の値を設定し、もう一方を逆算する方法などが用いられます。

複数のc・φの組合せを求めたうえで、土質試験結果や一般的な強度特性と整合する値を採用する場合もあります。

逆算値は計算だけで機械的に決めるのではなく、対象地山の土質や風化状態との整合性を確認することが重要です。

逆算したc・φを計画切土斜面へ適用する

自然地山から逆算したc・φを、計画切土斜面の円弧すべり解析へ適用します。

計画する法高や切土勾配、小段、地層構成、地下水条件、上載荷重などを設定し、最小安全率を算出します。

算出した安全率が所定の値を満足しない場合は、切土勾配を緩くする、法高を低くする、小段を設けるなど、計画断面を見直します。

逆算した強度定数を適用できるのは、基準とした自然地山と計画切土斜面の地質条件が類似している場合に限られます。

地層構成や風化状態、地下水条件が大きく異なる場合は、同じc・φをそのまま使用することはできません。

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円弧すべり逆算法の解析手順

円弧すべり逆算法では、周辺の自然地山をモデル化して強度定数を逆算した後、その値を計画切土断面へ適用します。

解析条件の設定が逆算値や計画断面の安全率に影響するため、地形や地層構成、地下水位を適切に反映することが重要です。

周辺の自然地山の代表断面を設定する

まず、計画地周辺にある安定した自然地山から、逆算に用いる代表断面を選定します。

代表断面には、計画切土斜面と地質構成や風化状態が類似し、地形を正確に把握できる箇所を選びます。

崩壊跡や地すべり地形、著しい侵食などが確認される斜面は、安定した自然地山として扱えないため、代表断面には適しません。

選定した断面について、測量成果や地形図などをもとに地表面形状を解析モデルへ反映します。

地下水位や土層構成を設定する

次に、地質調査結果をもとに、土層構成や単位体積重量、地下水位などを設定します。

土層構成は、ボーリング調査や現地踏査などから確認し、地質や風化状態が異なる範囲を区分します。

地下水位は円弧すべり解析の結果に大きく影響するため、観測結果や湧水状況を踏まえて設定する必要があります。

地下水位が季節や降雨によって変動する場合は、平常時だけでなく、設計上想定する水位条件についても検討します。

c・φを逆算する

設定した自然地山の解析モデルに対して円弧すべり解析を行い、最小安全率が1.0となる粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を求めます。

ただし、安全率1.0となるc・φの組合せは一つとは限りません。

そのため、土質試験結果や対象地山の土質特性を踏まえて一方の値を設定し、もう一方を逆算する方法などにより、採用値を検討します。

逆算した値については、試験結果や既往資料と比較し、対象地山の強度定数として妥当な範囲にあるか確認します。

計画切土断面の安全率を算出する

最後に、逆算したc・φを計画切土断面へ適用し、円弧すべり解析によって最小安全率を算出します。

解析モデルには、切土勾配や法高、小段、地層構成、地下水位、上載荷重などの計画条件を反映します。

算出した安全率が所定の値を満足しない場合は、切土勾配を緩くする、法高を低くする、小段を設けるなど、計画断面を見直します。

擁壁や地山補強土工などの対策工を採用する場合は、その効果を適切にモデル化したうえで、再度安全率を確認します。

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円弧すべり逆算法を適用する際の注意点

円弧すべり逆算法では、周辺の自然地山から逆算した強度定数を計画切土斜面へ適用します。

そのため、逆算に用いる自然地山の選定や解析条件が不適切な場合、算出した安全率の信頼性が低下します。

地質条件や安定状況、地下水位などを確認し、計画地を代表できる自然地山を選定することが重要です。

周辺地山と計画地の地質が同等であること

逆算したc・φを計画切土斜面へ適用するには、周辺の自然地山と計画地の地質条件が同等である必要があります。

地層構成や土質、風化の程度、亀裂や節理の状態などが異なる場合、周辺地山から逆算した強度定数で計画地を評価することはできません。

地質調査結果や現地踏査をもとに両者を比較し、同じ強度定数を適用できる範囲を確認します。

複数の地層が分布している場合は、地層ごとに強度定数を設定するなど、実際の地盤構成を解析モデルへ反映する必要があります。

周辺地山が長期間安定していること

逆算の対象とする自然地山は、長期間にわたって安定していることが前提です。

斜面崩壊や地すべりの履歴がある箇所、亀裂や段差が認められる箇所は、安定した自然地山として扱えません。

また、表面的に崩壊が確認されなくても、斜面下部のはらみ出しや樹木の傾斜、湧水などが見られる場合は注意が必要です。

地形図や過去の空中写真、現地踏査などを利用し、地形の変化や変状の有無を確認します。

地下水位の設定が解析結果に影響する

地下水位が上昇すると、すべり面に作用する間隙水圧が増加し、一般に安全率は低下します。

そのため、地下水位を実際より低く設定すると、逆算されるc・φや計画切土断面の安全率を過大に評価する可能性があります。

地下水位は、ボーリング孔内水位や観測井による計測結果、湧水位置などをもとに設定します。

降雨や季節による変動が想定される場合は、平常時だけでなく、設計上想定される水位上昇を考慮する必要があります。

地形改変や風化の影響を考慮する

自然地山は長期間安定していても、切土によって斜面形状や応力状態が変化すると、施工後も同じ状態が維持されるとは限りません。

切土によって斜面下部の土塊が除去されると、自然地山とは異なる形状のすべり面が発生する可能性があります。

また、切土面が露出すると、乾湿の繰り返しや降雨、凍結融解などによって風化が進行し、地山の強度が低下する場合があります。

必要に応じて法面保護工や排水工を計画し、施工時だけでなく供用後の地山状態も考慮して安全性を確認します。

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よくある質問

円弧すべり逆算法とは何ですか?

円弧すべり逆算法とは、周辺の安定した自然地山を利用して、粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を逆算する解析手法です。

逆算した強度定数を計画切土斜面へ適用し、円弧すべり解析によって所定の安全率を満足するか確認します。

自然地山の安定実績を設計へ反映できることが特徴です。

なぜ周辺の自然地山を利用するのですか?

自然地山は長期間安定している実績があり、風化や節理、亀裂などの影響を含めた地山本来の強度を反映しています。

そのため、室内試験だけでは評価しにくい自然地山の強度を、設計定数として推定できます。

ただし、計画地と周辺地山の地質条件が類似していることが前提です。

土質試験だけでは設計できませんか?

切土設計では、原則として土質試験だけで設計定数を設定することは一般的ではありません。

自然地山は風化や節理、亀裂などの影響を受けており、採取した試料だけでは地山全体の強度を適切に評価できないためです。

そのため、周辺の自然地山を利用した円弧すべり逆算法によって強度定数を設定し、土質試験は逆算結果の妥当性を確認する資料として活用されます。

円弧すべり解析との違いは何ですか?

円弧すべり解析は、設定した粘着力(c)と内部摩擦角(φ)を用いて斜面の安全率を求める解析です。

一方、円弧すべり逆算法は、安定した自然地山からc・φを逆算し、その値を円弧すべり解析へ適用するための手法です。

つまり、逆算法は設計定数を求める工程であり、円弧すべり解析は安全率を確認する工程という違いがあります。

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まとめ

円弧すべり逆算法は、周辺の安定した自然地山を利用して強度定数を逆算し、計画切土斜面の安全性を評価する解析手法です。

自然地山の安定実績を設計へ反映できるため、切土設計では広く用いられています。

一方で、計画地と周辺地山の地質条件が類似していることや、地下水位の設定が適切であることなど、適用にはいくつかの前提条件があります。

逆算した強度定数は、そのまま使用するのではなく、地質調査や土質試験の結果と照らし合わせながら妥当性を確認することも重要です。

円弧すべり逆算法の考え方や解析手順、注意点を理解しておくことで、切土斜面の安全性をより適切に評価できるようになるでしょう。

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