L型擁壁の根入れ深さは?基準と測り方を解説

L型擁壁の根入れ深さは、擁壁の安定性を確保するうえで重要な設計条件です。

宅地用擁壁では、一般に擁壁高さの15%以上かつ35cm以上を確保する必要があります。

ただし、第3種土質では20%以上かつ45cm以上とする自治体もあり、道路用擁壁では50cm以上を求められる場合があります。

また、擁壁前面に側溝や水路がある場合や、前面地盤が傾斜している場合は、地盤面の取り方にも注意が必要です。

本記事では、L型擁壁の根入れ深さの基準、測定位置、根入れを深くするケースについて解説します。

目次
  1. L型擁壁の根入れ深さの基準
    1. 宅地用擁壁は擁壁高さの15%以上かつ35cm以上が目安
    2. 第3種土質では擁壁高さの20%以上かつ45cm以上とする
    3. 道路用擁壁は原則として50cm以上を確保する
  2. L型擁壁の根入れ深さはどこから測る?
    1. 擁壁前面の地盤面から基礎底面までを測る
    2. 基礎コンクリートや均しコンクリートの扱いに注意する
  3. L型擁壁の根入れを深くする必要があるケース
    1. 擁壁前面に側溝や水路がある場合
    2. 前面地盤が傾斜している場合
    3. 洗掘や将来の掘削が想定される場合
    4. 基礎地盤が軟弱な場合
  4. 2段擁壁における根入れ深さの考え方
    1. 上部擁壁の荷重が下部擁壁に及ぼす影響を確認する
    2. 根入れだけでなく擁壁全体の安定性を検討する
  5. L型擁壁の根入れ深さを決める際の注意点
    1. 自治体や道路管理者の技術基準を確認する
    2. 製品図面の標準根入れをそのまま採用しない
  6. まとめ
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土質 太郎

建設コンサルタントに長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

■保有資格
・地質調査技士(現場技術・管理部門)
・1級土木施工管理技士
・地盤品質判定士

L型擁壁の根入れ深さの基準

L型擁壁の根入れ深さは、宅地用と道路用で参照する技術基準が異なります。

宅地用のL型擁壁では、盛土規制法の技術基準や自治体の開発許可基準、使用する擁壁の認定条件を確認して決定します。

一方、道路用擁壁では、道路土工に関する基準や道路管理者が定める設計要領に従う必要があります。

擁壁の用途・条件根入れ深さの目安
宅地用擁壁の一般的な基準擁壁高さの15%以上かつ35cm以上
第3種土質擁壁高さの20%以上かつ45cm以上
(※一部の自治体が採用)
道路用擁壁原則50cm以上

ただし、上記の数値だけで根入れ深さを決定することはできません。

前面地盤の傾斜、側溝や水路の有無、洗掘の可能性、基礎地盤の状態なども考慮する必要があります。

宅地用擁壁は擁壁高さの15%以上かつ35cm以上が目安

宅地用擁壁では、根入れ深さを擁壁高さの15%以上かつ35cm以上とする基準が広く用いられています。

根入れ深さは、次のうち大きいほうを採用します。

  • 擁壁高さ×15%
  • 35cm

例えば、擁壁高さが2.0mの場合、15%に相当する深さは30cmです。

この場合は35cmのほうが大きいため、根入れ深さは35cm以上とします。

一方、擁壁高さが3.0mの場合は、15%に相当する45cm以上の根入れが必要です。

第3種土質では擁壁高さの20%以上かつ45cm以上とする

基礎地盤が第3種土質に該当する場合は、根入れ深さを擁壁高さの20%以上かつ45cm以上とする自治体があります。

根入れ深さは、次のうち大きいほうを採用します。

  • 擁壁高さ×20%
  • 45cm

例えば、擁壁高さが2.0mの場合、20%に相当する深さは40cmです。

この場合は45cmのほうが大きいため、根入れ深さは45cm以上とします。

道路用擁壁は原則として50cm以上を確保する

道路用擁壁では、原地盤面または計画地盤面から基礎底面まで、原則として50cm以上の根入れを確保します。

宅地用擁壁とは異なり、擁壁高さに対する割合ではなく、最低根入れ深さを50cmとして扱う設計基準が一般的です。

また、河川や水路に近い場所では、洗掘によって前面地盤が低下する可能性もあります。

根入れ深さは50cmを最低値とし、現地条件や道路管理者の設計要領に応じて深くする場合もあります。

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L型擁壁の根入れ深さはどこから測る?

L型擁壁の根入れ深さは、擁壁前面の地盤面から基礎底面までの鉛直距離で確認します。

ただし、前面に側溝や水路がある場合や、前面地盤が傾斜している場合は、根入れの基準となる地盤面が変わることがあります。

擁壁前面の地盤面から基礎底面までを測る

一般的なL型擁壁では、擁壁前面の計画地盤面から底版下面までを根入れ深さとして測ります。

例えば、前面地盤面から底版下面までの鉛直距離が50cmであれば、根入れ深さは50cmです。

根入れ深さを確認する際は、次の位置を明確にします。

  • 上端:擁壁前面の地盤面
  • 下端:L型擁壁の底版下面
  • 測定方向:鉛直方向

前面地盤に高低差がある場合は、最も低い地盤面を基準とするなど、根入れが不足しないように設定します。

また、擁壁前面に側溝や水路がある場合は、地表面ではなく側溝底や水路底から根入れを確保するよう求められることがあります。

基礎コンクリートや均しコンクリートの扱いに注意する

L型擁壁の下部には、施工性の確保や基礎地盤の整形を目的として、均しコンクリートが施工されることがあります。

均しコンクリートはL型擁壁本体を構成する底版ではないため、一般には均しコンクリート下面までの深さを根入れ深さとはしません。

例えば、前面地盤面から底版下面までが50cmで、その下に10cmの均しコンクリートがある場合でも、根入れ深さは60cmではなく50cmです。

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L型擁壁の根入れを深くする必要があるケース

L型擁壁の根入れ深さは、基準となる最低寸法だけで決めるものではありません。

前面地盤が掘削や洗掘によって失われる可能性がある場合は、将来も必要な根入れ深さが確保されるように計画します。

また、基礎地盤が軟弱な場合は、根入れを深くするだけでなく、支持力や沈下に対する検討も必要です。

擁壁前面に側溝や水路がある場合

L型擁壁の前面に側溝や水路がある場合は、側溝底や水路底を考慮して根入れ深さを設定します。

一般には、側溝底や水路底からの安息角の範囲外まで根入れ深さを確保し、側溝や水路への荷重増加を回避します。

前面地盤が傾斜している場合

擁壁前面の地盤が傾斜している場合は、地盤面の高い位置を基準にすると、低い側で根入れが不足します。

そのため、原則として擁壁前面の最も低い地盤面を基準に、必要な根入れ深さを確保します。

擁壁に沿って前面地盤の高さが変化する場合は、区間ごとに根入れ深さを確認しなければなりません。

必要に応じて擁壁の底版高を段階的に下げるなど、全区間で所定の根入れを確保できる構造とします。

洗掘や将来の掘削が想定される場合

河川、水路、斜面の法尻付近では、流水や雨水によって擁壁前面の地盤が洗掘される可能性があります。

洗掘によって地盤面が低下すると、完成時には確保されていた根入れ深さが不足します。

このような場所では、想定される洗掘深を考慮して根入れを深くするほか、根固工や護床工などの洗掘対策を検討します。

また、将来の道路拡幅、側溝の改修、埋設管工事などによって擁壁前面が掘削される場合も注意が必要です。

将来の掘削範囲が分かっている場合は、掘削後の地盤面から必要な根入れ深さを確保します。

基礎地盤が軟弱な場合

浅い位置に軟弱層があり、その下に良質な地盤がある場合は、良質な支持層まで掘り下げることで対応できることがあります。

一方、軟弱層が厚い場合は、次のような対策を検討します。

  • 地盤改良
  • 良質土への置換
  • 基礎形式の変更
  • 擁壁形式や配置の見直し

根入れを深くすると擁壁高さや土圧条件も変わるため、既製品のL型擁壁では規格や認定条件から外れないか確認が必要です。

実務上は地盤改良で対応することが殆どです。

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2段擁壁における根入れ深さの考え方

L型擁壁を上下に配置する2段擁壁では、それぞれの擁壁に必要な根入れ深さを確保するだけでは不十分です。

上部擁壁の自重や背面土の荷重が下部擁壁へ影響する配置では、下部擁壁に作用する土圧や地盤反力が増加します。

そのため、上部擁壁と下部擁壁の離隔、高低差、基礎位置を確認し、2段擁壁全体として安全性を検討する必要があります。

上部擁壁の荷重が下部擁壁に及ぼす影響を確認する

上部擁壁が下部擁壁の背面に近接している場合、上部擁壁の自重や基礎地盤へ伝わる荷重が、下部擁壁に影響することがあります。

この影響を無視して下部擁壁を設計すると、想定以上の土圧や上載荷重が作用する可能性があります。

上部擁壁の荷重が下部擁壁へ影響する場合は、次の条件を確認します。

  • 上部擁壁と下部擁壁の水平離隔
  • 上下の擁壁の高低差
  • 上部擁壁の基礎底面の位置
  • 上部擁壁の自重と背面土の重量
  • 下部擁壁背面の地盤形状

十分な離隔を確保できない場合は、上部擁壁による荷重を上載荷重として考慮し、下部擁壁を設計します。

なお、自治体によっては2段擁壁そのものを認めないことも多いです。

根入れだけでなく擁壁全体の安定性を検討する

2段擁壁では、上部擁壁と下部擁壁について、それぞれ滑動、転倒、支持力の安全性を確認します。

さらに、上下の擁壁とその周辺地盤を含む範囲で、全体的な滑りに対する安定性も検討する必要があります。

主な検討項目は次のとおりです。

検討項目確認する内容
滑動土圧によって擁壁が前方へ移動しないか
転倒擁壁が前面側へ回転しないか
支持力基礎地盤に過大な地盤反力が生じないか
沈下上下の擁壁に不同沈下が生じないか
全体安定擁壁と地盤を含む範囲で滑りが発生しないか

配置によって安全性を確保できない場合は、根入れを深くするだけでなく、擁壁間の離隔を広げる、擁壁高さを見直す、地盤改良を行うなどの対策が必要です。

2段擁壁では、個々の根入れ深さだけでなく、上下の擁壁が相互に及ぼす影響を含めて設計することが重要です。

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L型擁壁の根入れ深さを決める際の注意点

L型擁壁の根入れ深さを決める際は、一般的な数値だけでなく、適用する技術基準と現地条件を確認します。

同じ高さのL型擁壁でも、設置する場所や前面地盤の状態によって、必要な根入れ深さは異なります。

特にプレキャストL型擁壁では、製品図面に記載された標準根入れをそのまま採用せず、設計条件に適合しているか確認が必要です。

自治体や道路管理者の技術基準を確認する

宅地用のL型擁壁では、盛土規制法に関する技術基準のほか、自治体が定める開発許可基準や擁壁の取扱基準を確認します。

道路用のL型擁壁では、道路土工に関する基準だけでなく、道路管理者が定める設計要領も確認しなければなりません。

根入れ深さの規定は、基準によって次の点が異なる場合があります。

  • 最低根入れ深さ
  • 擁壁高さに対する根入れの割合
  • 根入れを測る基準面
  • 側溝や水路がある場合の取扱い
  • 傾斜地盤に設置する場合の取扱い
  • 洗掘が想定される場合の追加条件

自治体や道路管理者によっては、一般的な基準よりも深い根入れを求める場合があります。

設計の初期段階で適用基準を確認し、平面計画や擁壁高さへ反映することが重要です。

製品図面の標準根入れをそのまま採用しない

プレキャストL型擁壁の製品図面には、標準的な根入れ深さが記載されていることがあります。

ただし、その寸法は一定の地盤条件や施工条件を想定したものであり、すべての現場に適用できるわけではありません。

設計時には、次の条件が製品の想定条件と一致しているか確認します。

  • 背面土の土質
  • 基礎地盤の支持力
  • 地下水位
  • 前面地盤の高さと勾配
  • 側溝や水路の有無
  • 上載荷重
  • 擁壁前面の掘削や洗掘の可能性

必要な根入れ深さが製品図面の標準寸法を上回る場合は、単純に製品を深く埋めればよいとは限りません。

壁面の露出高さが変わると、製品選定や構造計算の条件も変わります。

また、底版の位置を変更すると、施工時の掘削範囲や排水計画にも影響します。

標準条件から外れる場合は、製品の認定条件や設計計算書を確認し、必要に応じて製造メーカーへ適用の可否を確認します。

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まとめ

L型擁壁の根入れ深さは、宅地用・道路用で基準が異なります。

さらに、一般的な基準値を満たすだけではなく、側溝や水路、前面地盤の傾斜、基礎地盤の状態なども考慮しなければなりません。

自治体や道路管理者の技術基準を確認し、現地条件に適した根入れ深さを設定することが重要です。

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