「地盤改良とは何をする工事なのか」「調査結果が悪ければ必ず必要なのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
地盤改良は、計画する建物に必要な地盤性能を確保するための対策です。
ただし、土地の履歴や一つの調査値だけで要否や工法は決まりません。地盤調査、建物条件、支持力、沈下、施工条件、品質確認を分けて検討する必要があります。
本記事では、原地盤と材料を混合して性質を改善する工法に加え、鋼管などで建物荷重を地盤へ伝える補強方法も、一般向けに「地盤改良」と総称します。
設計資料では「地盤補強」「杭状地盤補強」「深層混合処理」などを区別するため、個別案件では正式な工法名と設計上の扱いを確認してください。
目次
地盤改良とは、建物に必要な地盤性能を確保する対策
地盤改良は、弱い地盤を一様に固くする工事とは限りません。建物から荷重が伝わる範囲を対象に、必要な性能を満たすよう地盤を改善または補強する工法です。
地盤改良の目的は、支持力と沈下の問題を必要な範囲で改善すること
地盤改良の目的は、地盤が建物荷重に耐えられる状態を確保し、支障となる沈下や傾じきを抑えることです。
設計では、地盤が破壊せずに支えられるかという「支持力」と、荷重によってどれだけ変形するかという「沈下」を別々に検討します。
建物直下の対策と、盛土や斜面を含む宅地全体の安定対策も対象範囲が異なります。
基礎工事・地盤補強・杭基礎とは役割と設計上の扱いが異なる
基礎は、建物の荷重を地盤へ伝える建物側の部分です。
地盤改良・地盤補強は、その荷重を受ける地盤側の性能に関わります。
柱状の改良体や鋼管をすべて「杭基礎」と一律に扱わず、設計者に支持の仕組み、設計法、認定・評定上の位置付けを確認してください。
地盤改良が必要かは、土地だけでなく建物との組み合わせで決まる
同じ土地でも、建物や基礎が変われば、地盤へ伝わる荷重と必要な対策は変わります。
土地と建物を組み合わせて判断することが基本です。
地盤調査の数値は判断材料であり、改良要否そのものではない
地盤調査には戸建てで用いられるSWS(スクリューウエイト貫入試験)のほか、ボーリング調査、標準貫入試験、土質試験があり、それぞれ確認できる内容が異なります。
設計者は、調査方法、測点、深度、地層、ばらつき、地下水、造成履歴を併せて読む必要があります。
SWSの測定値と標準貫入試験のN値は、無条件に置き換えられません。情報が不足する場合は追加調査も検討しましょう。
詳しくは、SWS(スクリューウエイト貫入試験)の仕組みと標準貫入試験とN値をご覧ください。
同じ地盤でも、建物荷重・基礎形式・配置で結果は変わる
同じ地盤でも、構造、階数、重量、平面形状、布基礎・べた基礎などの違いにより、荷重の伝わり方は変わります。
設計者は、基礎底面の接地圧、荷重の偏り、局部荷重、建物配置を確認しましょう。
擁壁や崖との位置関係、将来の増築が判断に影響する場合もあるため、建物計画が未確定の段階では最終判断できないことがあります。
支持力が足りても、沈下や不同沈下の懸念が残る
| 検討 | 確認すること | 主な視点 |
|---|---|---|
| 支持力 | 地盤が荷重で破壊しないか | 建物荷重、基礎形状、地層の強さ |
| 沈下 | 変形が支障のない範囲か | 軟弱層の厚さ、荷重の広がり、時間 |
| 不同沈下 | 場所ごとの沈下差が大きくないか | 地層・盛土厚のばらつき、荷重の偏り |
粘性土などでは、時間をかけて圧密沈下が進むことがあります。表層の強さや短時間の載荷結果だけで、深部の長期沈下までは評価できません。沈下と支持力の違いも参考にしてください。
液状化・盛土・斜面・擁壁は、建物直下の支持力とは別に確認する
液状化、盛土全体の沈下やすべり、斜面、擁壁は、それぞれ確認方法が異なります。基礎直下を改良した事実だけでは、これらの安全性まで証明できません。
ハザードマップは事前把握に役立ちますが、敷地調査や設計の代わりにはなりません。液状化の仕組みと盛土は地盤改良だけで安全といえるかも確認してください。
要否の判断は「調査→建物条件→照査→対策比較」の順に進める
地盤調査を行ったからといって、直ちに地盤改良の検討へ進むわけではありません。次の順序で必要性と対策を検討します。
資料調査・現地確認 → 地盤調査 → 建物条件 → 支持力照査 → 沈下照査 → 対策比較 → 設計 → 施工・検査
最初に資料調査と現地確認で、地形・造成履歴・周辺条件をつかむ
設計者や調査担当者は、旧地形、過去の土地利用、切土・盛土、近隣地盤を調べ、現地で擁壁、道路との高低差、排水、周辺建物の変状などを確認しましょう。
なお、田んぼや造成地という履歴は調査の手掛かりであり、改良要否の結論ではありません。元田んぼの地盤で確認すべきことも参考になります。
地盤調査で、建物を支える範囲の地層とばらつきを確認する
調査位置が予定建物位置と対応し、検討に必要な深度まで調べられているかを確認します。
機器が貫入できないことを、十分な厚さの支持層を確認したことと取り違えてはいけません。
土質、地下水、腐植土、盛土、軟弱層、地中障害物など、設計・施工に影響する情報も整理するようにしましょう。
直接基礎で成立するかを検討し、必要な場合に地盤対策を比較する
設計者は、まず計画建物と基礎で支持力と沈下に関する性能を満たせるか検討します。
満たせない場合は、基礎形式の変更、掘削・置換、地盤改良・補強などを比較します。
「改良不要」とする場合にも、建物条件と照査根拠が必要です。
この流れは、日本建築学会『小規模建築物基礎設計指針』の事前調査、地盤調査、基礎計画、地盤補強という構成にも対応します。
採用理由は、設計条件と施工条件の両方から説明してもらう
採用するのは「一番強い工法」ではなく、地盤と建物に必要な性能を満たし、現場で適切に施工・検査できる工法です。
地層、深度、荷重、敷地、施工機械、周辺影響、品質確認を踏まえた採用理由と、ほかの案を採用しなかった理由を、設計者や施工者から説明してもらいましょう。
主な工法は、改良する深さと荷重の伝わり方が異なる
住宅では、原地盤と固化材を混ぜる工法のほか、鋼管、砕石、木材を用いる方法があります。工法名だけで順位を付けず、荷重を支える仕組みを確認しましょう。
浅い範囲を面として改善する浅層混合処理
浅層混合処理は、比較的浅い原地盤と固化材を混合し、建物下を面状に改良する工法です。
設計では、改良強度・範囲・厚さだけでなく、下部の未改良地盤の支持力と沈下、パンチング破壊を検討します。
日本建築学会『小規模建築物基礎設計指針』2008制定の7.3節もこれらを分けて扱っています。適用できる深さは、地盤、機械、施工・品質管理条件、採用基準で確認してください。表層改良の仕組みと注意点も参考になります。
柱状の改良体で荷重を伝える深層混合処理
深層混合処理は、セメント系固化材と原地盤を混合し、柱状などの改良体を築造する工法です。
設計者は、径、本数、配置、長さ、先端地盤、周面抵抗、沈下、水平力、品質のばらつきを検討します。「支持層まで届けば安全」「支持層がなければ施工できない」と単純化せず、採用設計法を確認しましょう。
詳しくは柱状改良の仕組みと設計上の注意点と深層混合処理工法の概要をご覧ください。
鋼管系・砕石系・木材系などは、支持機構と適用条件を個別に確認する
セメント系以外の方法も、先端や周面で支えるもの、地盤を締め固めるものなど仕組みは同一ではありません。
設計者に、正式な工法資料に基づく対象土質、支持機構、施工管理、品質確認、耐久性を説明してもららうようにしましょう。
建て替えを考えるなら、地中残置物の残置または撤去及び再利用材の有無も確認します。
工法選定では、地盤・建物・施工・将来条件を比較する
| 比較軸 | 確認内容 | 条件で変わる点 |
|---|---|---|
| 地盤・建物 | 土質、軟弱層、地下水、荷重、基礎 | 支持の仕組み、範囲・本数 |
| 施工 | 搬入路、空間、騒音・振動、残土、周辺構造物 | 機械、手順、周辺対策 |
| 品質 | 施工記録、試験、合否基準 | 確認できる性能 |
| 将来・費用 | 増改築、撤去、材料、回送、試験 | 総額、工程、地中残置物 |
地盤改良工事は、設計だけでなく施工と品質確認までが一続き
地盤改良が適切に設計されていても、現場条件との不一致や施工結果の未確認があれば、必要な性能を確保したとは判断できません。
着工前に、設計仕様と現場条件が一致しているか確認する
設計者と施工者は、工法、配置、範囲・深度、設計強度、材料、配合、機械、施工順序を共有するようにしましょう。
地中障害物、地下水、搬入路、境界、近接構造物、残土・排泥も確認してください。セメント系固化材を使用する場合は、対象土と採用基準に照らして室内配合試験や試験施工の要否を判断する必要があります。
施工中は、設計値ではなく実際の施工記録を残す
施工者は、位置、本数・範囲、深度、材料使用量、施工速度、攪拌・締固め、施工日、使用機械など、工法ごとの管理項目を記録しましょう。
雨天、地下水、土質変化、障害物などの異常と対応も記録に残す必要があります。
写真は資料の一部であり、深度や材料量、品質試験の代わりにはなりません。
施工後は、工法に応じた試験と合否判定を確認する
一軸圧縮試験、コア採取、平板載荷試験などは、目的と確認できる性能が異なります。
施主は、採用基準に基づく試験方法、位置・数量、試験時期または材齢、合格基準、不合格時の措置を確認してください。
一つの局所試験の合格判定だけで、敷地全体や別の沈下現象まで保証したとはいえません。
施主が受け取る資料は、将来の売却・建て替えにも関わる
| 段階 | 主な資料 |
|---|---|
| 調査 | 地盤調査報告書 |
| 検討・設計 | 判定根拠、設計図、仕様書、配置図 |
| 施工前 | 材料・配合資料、施工計画書 |
| 施工中 | 施工・出来形・変更記録、工事写真 |
| 施工後 | 品質試験と合否判定、保証書・条件書 |
資料は、将来の増改築、売却、建て替えで地中の状況を把握する手掛かりになります。
紙と電子データの両方で保管するとよいでしょう。
費用と工期は、面積だけでなく設計・施工条件で変わる
費用と工期は建物面積だけでは決まりません。同じ範囲と条件で比較してください。
見積額は、工法・深度・数量・材料・残土・搬入条件で変わる
費用には、改良径・本数・深度・範囲、材料、重機回送、残土・排泥処分、養生、試験、交通・近隣対策が影響します。
見積りでは、工事範囲、数量、試験、処分、追加費用の条件をそろえてください。前提のない坪単価や総額だけでは、提案の違いを比べられません。
工期は施工日数だけでなく、調査・設計・試験・養生を含めて確認する
工程は「調査→解析・設計→見積り・準備→施工→養生・試験→合否判定→基礎着工」と進みます。
期間は天候、土質、地下水、搬入条件、試験材齢、再試験などの状況によって変化します。施工日数だけでなく、調査から基礎着工までを工程表で確認するようにしましょう。
よくある誤解を避けると、提案内容を正しく確認できる
一つの数値や土地の呼び方だけで評価せず、何を追加確認すれば判断できるかを整理します。
「N値が低い」「土地履歴」だけでは改良の要否を決められない
N値は、土質、深度、地層の連続性、調査方法とともに読みます。
土地履歴は調査の手掛かりであり、要否そのものではありません。設計者が調査結果と建物条件から支持力と沈下を検討します。軟弱地盤とN値の見方も参考にしてください。
地盤改良をしても、液状化・盛土・斜面のリスクが自動的に消えるわけではない
基礎直下の支持力・沈下対策が、液状化、盛土全体のすべりや沈下、斜面、擁壁まで対象にしているとは限りません。
宅地全体に関わる事項は造成・擁壁の設計者や、必要に応じて計画地を管轄する自治体へ、調査資料と計画図を示して確認できるようにしましょう。
地盤保証は重要だが、設計・施工・検査の代わりではない
地盤保証は不具合時の契約上の備えです。
技術的な妥当性は調査、設計、施工、検査の記録で確認しましょう。
保証主体、対象、期間、上限、免責を確認してください。地震、液状化、造成地盤、増改築の扱いは契約ごとに異なります。
施主は「なぜ必要か・なぜこの工法か・どう確認したか」を質問する
施主は設計者・施工者の説明と資料のつながりを確認しましょう。
契約・着工前に確認する質問
- どの調査結果が判断に影響しましたか。
- 検討した建物と基礎の条件は何ですか。
- 支持力と沈下をそれぞれどう確認しましたか。
- 改良しない案や他工法と何を比較しましたか。
- 採用工法の適用範囲と敷地固有の注意点は何ですか。
- 見積り外の項目と追加費用の条件は何ですか。
- 施工後に何を試験し、どの基準で判定しますか。
回答に関しては口頭だけでなく、調査報告書、検討書、設計図、見積書、施工計画書の該当箇所を示してもらいましょう。
施工後に確認・保管する資料
設計図の位置・範囲・深度・数量と、施工記録・試験結果が対応しているか確認してください。
変更があれば、理由、再検討内容、変更後の記録も受け取るようにしましょう。
不一致や判定根拠の不足がある場合は、まず設計者と施工者へ書面で説明を求めましょう。
第三者に確認する場合は、建物図面、地盤調査報告書、検討書、施工記録、試験結果をそろえて、地盤・基礎を扱う専門家へ相談してください。
まとめ
地盤改良とは、計画する建物に必要な支持力を確保し、支障となる沈下や傾きを抑えるために、地盤を改善または補強する対策です。
改良の要否や工法は、地盤調査、建物条件、支持力、沈下、施工条件、品質確認を順に検討して決める必要があります。
施主は「なぜ改良が必要か」「なぜこの工法か」「施工結果を何で確認したか」などを資料に沿って説明してもらい、調査から検査までの記録を大事に保管してください。
参考資料
- 一般社団法人 日本建築学会『小規模建築物基礎設計指針』2008制定
- 一般財団法人 日本建築センター『建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針』2018年版