「盛土はなぜ崩壊するの?」
「豪雨や地震で盛土が崩壊するメカニズムを知りたい。」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
盛土崩壊は、単に雨が降ったから発生するわけではありません。
多くの場合は盛土内へ浸透した水によって有効応力が低下し、せん断強度が不足することで円弧すべりなどの崩壊が発生します。
また、締固め不足や排水工の不備などの内的要因に加え、豪雨や地震などの外的要因が重なることで崩壊の危険性はさらに高まります。
この記事では、盛土崩壊のメカニズムを地盤工学の観点から分かりやすく解説するとともに、内的要因・外的要因、さらに崩壊を防ぐための対策について技術者向けに詳しく解説します。
盛土崩壊のメカニズムとは?

盛土崩壊は、盛土内部のせん断強度が低下し、すべり面に沿って土塊が移動することで発生します。
崩壊の直接的な原因はせん断強度の低下ですが、その多くは降雨や地下水などの水の影響が引き金となります。
ここでは、盛土崩壊が発生する基本的なメカニズムについて解説します。
多くの盛土崩壊は水が原因となる
盛土崩壊の多くは、降雨や地下水などの水が原因です。
特に豪雨や長雨では盛土内部へ大量の水が浸透するため、崩壊の危険性が高まります。
このため、盛土設計では雨水の浸透を抑制するとともに、万が一浸透した水を速やかに排出できるよう排水工を適切に配置することが重要です。
水の浸透によってせん断強度が低下する
盛土内部へ水が浸透すると、土粒子に浮力が作用して有効応力が低下します。
その結果、土粒子同士の噛み合わせが弱まり、せん断強度も低下します。
せん断強度が斜面に作用するせん断応力を下回ると、盛土は安定性を維持できなくなります。
円弧すべりなどの崩壊が発生する
せん断強度が不足すると、盛土はすべり面に沿って変形し、崩壊に至ります。
盛土で最も代表的な崩壊形態は円弧すべりです。
円弧すべりでは、円弧状のすべり面に沿って土塊が滑動し、大規模な法面崩壊が発生することがあります。
一方で、崩壊条件や地盤条件によっては、表層崩壊などの崩壊形態を示す場合もあります。
盛土崩壊の内的要因
盛土崩壊は豪雨や地震などの外的要因だけでなく、盛土自体が抱える問題によって発生しやすくなります。
設計や施工が不適切な場合は、通常時は安定していても、降雨や地震をきっかけに崩壊へ至ることがあります。
ここでは、盛土崩壊を引き起こす主な内的要因について解説します。
締固め不足
締固めが不十分な盛土は空隙が多く、雨水が内部へ浸透しやすくなります。
また、土粒子同士の噛み合わせも弱いため、十分なせん断強度を確保できません。
その結果、降雨時に有効応力が低下しやすくなり、盛土崩壊の原因となります。
盛土材料の品質
盛土材料の品質も、盛土の安定性を左右する重要な要素です。
有機質土や高含水比の土、風化の著しい土などは、締固め性や強度が十分に確保できない場合があります。
そのため、設計では盛土材料の品質を確認し、必要に応じて材料の入れ替えや改良を行います。
排水工の不足・機能低下
排水工が不足していたり、排水機能が低下したりすると、盛土内部に水が滞留しやすくなります。
その結果、有効応力が低下してせん断強度が減少し、盛土崩壊の危険性が高まります。
排水工は設置するだけでなく、土砂や落葉による閉塞がないよう維持管理することも重要です。
法面勾配が急である
法面勾配が急になるほど、斜面に作用するせん断力は大きくなります。
一方で、盛土のせん断強度は変わらないため、安全率が低下し、崩壊しやすくなります。
このため、盛土の高さや土質に応じて適切な法面勾配を設定する必要があります。
軟弱地盤上に築造されている
軟弱地盤上に盛土を築造すると、不同沈下や側方変位が発生する場合があります。
その結果、盛土内部にひび割れや変形が生じ、雨水が浸透しやすくなることで崩壊の危険性が高まります。
必要に応じて地盤改良や段階施工などを行い、基礎地盤の安定性を確保することが重要です。
盛土崩壊の外的要因
盛土崩壊の外的要因とは、降雨や地震、人為的な地形改変など、盛土の外部から作用する要因を指します。
盛土が適切に設計・施工されていても、これらの外的要因によって盛土の安定性が低下し、崩壊に至る場合があります。
ここでは、盛土崩壊を引き起こす代表的な外的要因について解説します。
豪雨による雨水の浸透
豪雨や長雨によって大量の雨水が盛土内部へ浸透すると、有効応力が低下し、せん断強度が減少します。
また、排水能力を超える降雨では盛土内部に水が滞留しやすくなり、崩壊の危険性が高まります。
近年は線状降水帯などによる短時間豪雨も増えており、盛土の排水性能を考慮した設計や維持管理が重要です。
地震による慣性力や液状化
地震が発生すると、盛土には地震動による慣性力が作用し、斜面に作用するせん断力が増加します。
また、地下水位が高い砂質地盤では液状化が発生し、地盤の支持力やせん断強度が低下する場合があります。
これらの影響によって盛土が変形・沈下し、円弧すべりなどの崩壊へ発展することがあります。
法先部の掘削や想定外の上載荷重
盛土完成後に法先部を掘削したり、当初設計で想定していない追加盛土や直接基礎の構造物を設置したりすると、盛土の応力状態が変化します。
法先部の掘削は法面を支える力を低下させるため、円弧すべりが発生しやすくなります。
一方、追加盛土や直接基礎の構造物は盛土に作用する上載荷重を増加させるため、安全率が低下する場合があります。
このような地形改変や土地利用の変更を行う場合は、円弧すべり解析などにより、盛土の安定性を事前に確認することが重要です。
盛土崩壊を防ぐ対策

盛土崩壊を防ぐには、設計・施工・維持管理の各段階で適切な対策を講じることが重要です。
盛土の安定性は、締固めや排水対策だけでなく、地盤条件や盛土条件に応じた対策工法を適切に採用することで確保されます。
ここでは、盛土崩壊を防ぐ代表的な対策を紹介します。
適切に締め固める
盛土は、規定の層厚ごとに十分な締固めを行うことが基本です。
締固め不足は密度の低下だけでなく、雨水が浸透しやすくなる原因となり、盛土崩壊のリスクを高めます。
施工時は適切な含水比を管理しながら、所定の締固め度を確保することが重要です。
排水施設を適切に設置する
盛土崩壊の多くは雨水の浸透が原因となるため、排水対策は最も重要な対策の一つです。
まず、盛土内への雨水の浸透を抑えるため、法面排水工や側溝、小段排水工などを設置し、地表水を速やかに排水します。
それでも盛土内へ浸透した雨水は、基面排水層や水平排水層、地下排水工などによって速やかに排除し、盛土内部に水が滞留しないようにすることが重要です。
また、排水施設は施工するだけでなく、定期的に点検・維持管理を行い、排水機能を維持する必要があります。
法先を透水性の高い構造物で補強する
法先部の安定性が不足する場合は、蛇籠工などの透水性の高い構造物を設置し、法先を補強する方法があります。
透水性を確保することで盛土内の水圧が上昇しにくくなり、法先の支持力向上と排水性の確保を両立できます。
なお、構造物を設置する場合は、構造物自体の外的安定(滑動・転倒・支持力)を照査するとともに、円弧すべり解析による盛土全体の安定性についても確認することが重要です。
植生工・法面保護工を施工する
植生工や法面保護工は、降雨による法面侵食を防ぎ、盛土の安定性を維持するために施工します。
法面の侵食を放置すると、法面の崩壊が進行する場合もあるため、盛土条件に応じた工法を選定することが重要です。
地盤改良や補強盛土工法を採用する
軟弱地盤上では、深層混合処理工法などの地盤改良を実施し、支持力の向上や沈下の抑制を図ります。
また、高盛土や急勾配の法面では、ジオテキスタイルなどを用いた補強盛土工法を採用し、盛土全体の安定性を向上させます。
設計時には、地盤条件や盛土条件に応じて必要な対策工法を選定し、円弧すべり解析などにより所要の安全率を満足することを確認することが重要です。
よくある質問

盛土崩壊の主な原因は何ですか?
盛土崩壊の主な原因は、雨水の浸透によるせん断強度の低下です。
また、締固め不足や排水施設の機能低下、地震による慣性力や液状化、法先部の掘削や想定外の上載荷重など、複数の要因が重なることで崩壊する場合もあります。
盛土はなぜ雨で崩壊するのですか?
雨水が盛土内へ浸透すると、有効応力が低下して土のせん断強度が小さくなります。
さらに、盛土内部に水が滞留すると間隙水圧が上昇し、円弧すべりなどの崩壊が発生しやすくなります。
そのため、地表水を適切に排水するとともに、盛土内へ浸透した水を速やかに排除する排水対策が重要です。
盛土と切土ではどちらが崩壊しやすいですか?
一般的には、盛土の方が崩壊しやすいとされています。
盛土は人工的に築造されるため、締固め不足や排水不良など施工品質の影響を受けます。
一方、切土は自然地盤を利用するため比較的安定していますが、風化や地下水、地質条件の影響によって崩壊することがあります。
盛土崩壊は予測できますか?
盛土崩壊を完全に予測することは困難ですが、地盤調査や円弧すべり解析を実施することで、崩壊リスクを事前に評価できます。
また、法面の変状や排水施設の機能低下を定期的に点検し、必要に応じて補修を行うことで、崩壊リスクの低減につながります。
まとめ

盛土崩壊は、雨水の浸透によるせん断強度の低下を主な原因として発生します。
また、締固め不足や排水施設の機能低下、地震による慣性力や液状化、法先部の掘削や想定外の上載荷重など、複数の要因が重なることで崩壊リスクは高まります。
盛土崩壊を防ぐためには、適切な締固めや排水対策に加え、必要に応じて法先補強や地盤改良、補強盛土工法などを採用することが重要です。
設計時には円弧すべり解析などによって安全性を確認し、施工後も排水施設や法面を適切に維持管理することで、長期的に安定した盛土を維持できます。
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