切土と盛土の違いとは?意味・宅地の注意点と図面での見分け方を解説

造成地の図面や土地の説明で「切土」「盛土」という言葉を見かけても、宅地としてどう違うのかまでは分かりにくいものです。

切土(きりど)は斜面や高い所を削って地面を下げる工事、盛土(もりど)は土を運んで盛り、地面を上げる工事です。

切土は比較的堅固である可能性が高い一方、盛土の宅地は運んできた土を締め固めて造った地盤のため、締固めと排水の出来が安全性を左右します。

また、切土と盛土の境目にまたがる宅地では、不同沈下にも注意が必要です。

この記事では、切土と盛土の意味と違い、宅地として見たときの注意点、図面での見分け方、盛土等規制法での扱いを、法令の条文に沿って解説します。

目次
  1. 切土と盛土の違いは「地面を削るか、土を盛るか」
    1. 切土とは:斜面や高い所を削って地面を下げる工事
    2. 盛土とは:土を運んで盛り、地面を上げる工事
    3. 切土と盛土の比較表
  2. 宅地として見たときの切土と盛土の違い
    1. 切土の宅地:元の地盤なので沈下しにくいが、崖と地山の質に注意
    2. 盛土の宅地:締固めと排水の出来で安全性が決まる
    3. 切土と盛土にまたがる宅地は不同沈下に注意
  3. 図面で切土と盛土を見分ける方法
    1. 断面図:造成前と造成後の地盤線を比べる
    2. 平面図:切土・盛土の範囲の塗り分けと凡例を見る
    3. 図面が手元に無いときの調べ方
  4. 盛土等規制法での切土・盛土の扱い
    1. 許可が必要になる条件は、盛土のほうが厳しい
    2. 擁壁が必要になる崖の高さも、盛土のほうが低い
    3. 盛土には締固め・透水層・段切りが求められる
  5. よくある質問
    1. 「盛土」と「盛り土」は違うものですか?
    2. 切土の土地なら地盤は安心ですか?
    3. 盛土の土地は避けたほうがいいですか?
    4. 盛土と埋戻しは何が違いますか?
  6. まとめ
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土質 太郎

建設コンサルタントに長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

■保有資格
・地質調査技士(現場技術・管理部門)
・1級土木施工管理技士
・地盤品質判定士

切土と盛土の違いは「地面を削るか、土を盛るか」

切土と盛土は、どちらも土地の高さを変える造成工事です。違いは、地面を削って下げるか、土を盛って上げるかにあります。

傾斜地を平らな宅地にするときは、高い側を切土で削り、低い側を盛土で埋めて高さを揃える必要があります。

同じ造成地の中に、切土の区画と盛土の区画が並ぶのはこのためです。

切土とは:斜面や高い所を削って地面を下げる工事

切土とは、地面を削り取って、計画した高さまで地盤面を下げる工事です。

削ったあとに出てくるのは、長い年月をかけて自然にできた元からの地盤(地山)です。

宅地造成では、斜面の上側を削って平らな敷地をつくるときや、道路と高さを合わせるときに行います。

削った面が急になると崖ができるため、勾配を緩くするか、擁壁で覆う対策が必要になります。

盛土とは:土を運んで盛り、地面を上げる工事

盛土とは、土を運んで盛り、計画した高さまで地盤面を上げる工事です。

谷や低い土地を埋めて平らにするときや、浸水を避けるために敷地を高くするときに行います。

盛った土は、そのままでは隙間が多く軟らかいため、薄い層に分けて機械で締め固めながら積み上げます。

盛土の地盤は人の手で造ったものなので、材料・締固め・排水をどこまで丁寧に施工したかで、完成後の強さが変わります。

切土と盛土の比較表

比較項目切土盛土
読み方きりどもりど
工事の内容地面を削って下げる土を盛って上げる
造成後の地盤元からの地盤(地山)運んできた土を締め固めた地盤
起こりやすい問題崖面の崩れ、滑りやすい層に沿った滑り沈下、雨水の浸透による緩み・崩壊・滑り
擁壁が原則必要になる崖高さ2mを超える崖高さ1mを超える崖
主な対策勾配を緩くする、擁壁、法面保護工層ごとの締固め、透水層、段切り、擁壁

擁壁が原則必要になる崖とは、盛土等規制法の許可を受けて行う工事の基準です(詳しくは後半の「盛土等規制法での切土・盛土の扱い」で解説します)。

盛土のほうが、低い崖から擁壁の設置を求められます。

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宅地として見たときの切土と盛土の違い

宅地として見ると、切土と盛土の違いは「地盤の中身」にあります。切土は自然の地盤、盛土は人が造った地盤です。

土地を買う、家を建てるといった場面では、敷地が切土・盛土のどちらなのか、両方にまたがっていないかを確かめておきましょう。

切土の宅地:元の地盤なので沈下しにくいが、崖と地山の質に注意

切土の宅地は、長い年月で締まった地山の上に建物が載ります。そのため、盛土の宅地に比べて沈下は起こりにくいのが一般的です。

ただし、切土なら必ず安心というわけではありません。注意したいのは次の2点です。

  • 削った面にできた崖:崖面が風化して崩れることがあります。高い崖は、勾配を緩くするか擁壁で覆うのが原則です。
  • 地山そのものの質:地山に軟らかい層や滑りやすい層があれば、切土でも沈下や滑りが起こります。

切土で崖が残る場合の勾配の考え方は、擁壁を設置しない場合の切土のり面勾配で解説しています。

盛土の宅地:締固めと排水の出来で安全性が決まる

盛土の宅地では、盛った土の締固めと排水が安全性を決めます。締固めが足りないと、完成後に盛土が自分の重さや建物の重さで沈む恐れがあります。

雨水や地下水が盛土の中にたまりやすいことも問題です。

土が水を含むと緩み、沈下や崩壊、滑りにつながります。盛土等規制法の施行令が、盛土に層ごとの締固めと透水層を求めているのはこのためです。

また、古い時代に造られた盛土の中には、今ほど品質管理が行き届いていないものもあります。

盛土の宅地で気をつけたい点は、盛り土はやめた方がいい?危険と言われる理由を技術的に解説で詳しく扱っています。

切土と盛土にまたがる宅地は不同沈下に注意

宅地の中に切土と盛土の境目(切盛境界)があると、建物の下で地盤の硬さが急に変わります。盛土側だけが沈むと、建物が傾く不同沈下につながります。

国土交通省の盛土等防災マニュアルも、切土と盛土の接合部について次のように注意を促しています。

特に盛土と切土の接合部は、地盤支持力が不連続になったり、盛土部に湧水、浸透水等が集まり盛土が軟化して完成後仕上げ面に段違いを生じたり、地震時には滑り面になったりするおそれもあることから、十分な締固めを行う必要がある。

傾斜地を切土と盛土で平らにした造成地では、1つの区画の中に切盛境界が通っていることがあります。

家を建てる前の地盤調査では、敷地の複数の点の結果を見比べ、場所によって硬さに差がないかを確かめましょう。

住宅の地盤調査でよく使われる試験は、SWSとは?スクリューウエイト貫入試験の解説で紹介しています。

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図面で切土と盛土を見分ける方法

切土と盛土の範囲は、造成の図面で確かめられます。盛土等規制法の許可申請では、施行規則が次の図面に切土・盛土を描くよう定めています。

  • 土地の平面図:「盛土又は切土をする土地の部分」を明示する
  • 土地の断面図:「盛土又は切土をする前後の地盤面」を明示する

実務では、造成計画平面図・造成計画断面図と呼ばれる図面です。

断面図:造成前と造成後の地盤線を比べる

断面図では、造成前の地盤線と造成後の地盤線の上下で見分けます。

断面図の見え方判定
造成後の線が造成前の線より下にある切土(削った部分)
造成後の線が造成前の線より上にある盛土(盛った部分)
2本の線が交わる点がある切盛境界(切土と盛土の境目)

2本の線に挟まれた範囲の厚さが、削った深さ、または盛った高さです。盛土の厚さが大きいほど、締固めや沈下の影響を受けやすくなります。

平面図:切土・盛土の範囲の塗り分けと凡例を見る

平面図では、切土をする範囲と盛土をする範囲が、色やハッチ(斜線の模様)で塗り分けられているのが一般的です。

どの色・模様が切土で、どれが盛土かは図面ごとに違います。必ず図面の凡例で確かめましょう。色だけで判断すると、取り違えるおそれがあります。

平面図に造成前の高さと計画の高さが数字で書かれている場合は、2つの差でも見分けられます。計画の高さのほうが高ければ盛土、低ければ切土です。

ただし、現地盤より低い場合でも過去に造成された盛土を切っている場合もあるので、今昔マップなどで旧地形なども確認するようにしましょう。

図面が手元に無いときの調べ方

すでにできあがった宅地では、造成の図面が手元に無いことも多いでしょう。その場合は、次の方法で手がかりを集めます。

  • 開発登録簿を閲覧する:開発許可を受けて造成された土地なら、自治体で開発登録簿を閲覧できます。登録簿に付く図面は土地利用計画図で、切土・盛土の範囲まで分かるかは、自治体に残っている資料によります。
  • 造成前の地形を見る:昔の地形図や航空写真と見比べ、谷や沢、池だった場所は盛土の可能性が高いと考えられます。
  • 大規模盛土造成地マップを見る:国土交通省の「重ねるハザードマップ」で、谷や沢を埋めたり傾斜地に盛ったりした規模の大きい盛土造成地の、おおむねの位置を確かめられます。

大規模盛土造成地マップについて、国土交通省は「大規模盛土造成地は直ちに危険な土地ではありません」と説明しています。マップに載っていることだけで危険と決めつけず、擁壁や地盤の状態とあわせて判断しましょう。

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盛土等規制法での切土・盛土の扱い

盛土等規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)では、切土と盛土は同じ「土地の形質の変更」として扱われます。

ただし、許可が要る規模と擁壁の基準は、切土と盛土で異なります。法律の全体像は【用語解説】盛土等規制法で確認できます。

許可が必要になる条件は、盛土のほうが厳しい

宅地造成等工事規制区域の中では、次の規模の切土・盛土に許可が必要です(施行令第3条)。

工事許可が必要になる規模
盛土高さ1mを超える崖ができる
切土高さ2mを超える崖ができる
盛土と切土を同時に行う高さ2mを超える崖ができる
崖ができない盛土高さ2mを超える
上のどれにも当たらない盛土・切土面積500㎡を超える

ここでいう崖は、地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす土地(硬い岩盤を除く)のことです(施行令第1条)。

盛土は高さ1mを超える崖で許可の対象になり、切土より小さな規模から規制を受けます。特定盛土等規制区域の規模や、届出で済む場合を含めた全体は、盛土等規制法で「許可が必要になる行為」とは?で整理しています。

擁壁が必要になる崖の高さも、盛土のほうが低い

許可を受けて行う工事では、盛土で高さ1mを超える崖、切土で高さ2mを超える崖ができると、原則として崖面を擁壁で覆います(施行令第8条)。

切土の崖には例外があります。土質に応じて勾配が一定の角度以下の崖面や、安定計算で擁壁が要らないと確かめた崖面は、擁壁を設けなくてもかまいません。

盛った土より地山のほうが安定しているという考え方が、基準の差に表れています。

盛土には締固め・透水層・段切りが求められる

施行令第7条は、盛土の地盤について次の措置を求めています。

  • おおむね30cm以下の厚さの層に分けて土を盛り、層ごとにローラーなどで締め固める
  • 盛土の中にしみ込んだ水を速やかに抜くため、砂利などで透水層を設ける
  • 著しく傾斜した土地に盛るときは、元の地盤と盛土の境が滑り面にならないよう段切りなどを行う

切土については、削ったあとの地盤に滑りやすい土質の層があれば、地滑り抑止ぐいの設置や土の置き換えで滑りを防ぐよう定めています。

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よくある質問

「盛土」と「盛り土」は違うものですか?

同じものです。法令や技術基準では「盛土」と書くのが一般的で、「盛り土」は送り仮名を付けた書き方です。読み方は「もりど」が一般的ですが、「もりつち」と呼ぶ人もいます。

切土の土地なら地盤は安心ですか?

沈下の面では盛土より有利なことが多いものの、切土というだけで安心とはいえません。

切土でできた崖や擁壁の状態、地山に軟らかい層が無いかによって安全性は変わります。家を建てる前の地盤調査で、実際の地盤を確かめましょう。

盛土の土地は避けたほうがいいですか?

一律に避ける必要はありません。基準に沿って締固めと排水が行われた盛土は、宅地として使われています。

造成の年代や擁壁の状態、地盤調査の結果を見て判断しましょう。

盛土と埋戻しは何が違いますか?

盛土は地面を高くするために土を盛る工事、埋戻しは掘削でできた空間を元の高さまで埋める工事です。違いは盛土と埋戻しの違いとは?で解説しています。

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まとめ

切土は地面を削って下げる工事、盛土は土を盛って上げる工事です。

切土は沈下は起こりにくいのが一般的です。一方盛土の宅地は人が造った地盤で、締固めと排水の出来が安全性を左右します。

盛土等規制法でも、盛土は切土より低い崖から許可と擁壁が求められます。

また、切土と盛土の境目にまたがる宅地は、不同沈下に注意が必要です。

造成の図面があれば断面図の地盤線と平面図の凡例で範囲を確かめ、図面が無ければ造成前の地形やマップで手がかりを集めましょう。

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