「盛り土はやめた方がいい」という声を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際に、地震や豪雨による盛土災害が報道されるたびに、「盛り土は危険」というイメージを持たれがちです。
しかし、盛り土だから危険というわけではありません。
現在の盛り土は、地盤条件に応じた設計や締固め管理、排水対策などを行うことで、安全性を確保したうえで施工されています。
一方で、高度経済成長期に造成された古い盛り土の中には、現在ほど品質管理が徹底されておらず、注意が必要な造成地があることも事実です。
この記事では、盛り土が「やめた方がいい」と言われる理由や注意すべき盛り土の特徴、現在の盛り土との違いについて、土木・宅地造成の視点からわかりやすく解説します。
盛り土はやめた方がいいと言われる理由
「盛り土はやめた方がいい」と言われる背景には、過去に発生した盛土災害や不同沈下などのトラブルがあります。
盛り土は人工的に土を積み重ねて造成するため、地山とは異なる特徴を理解したうえで設計・施工を行うことが重要です。
ここでは、盛り土が危険と言われる主な理由について解説します。
地山より沈下リスクが高い
盛り土は、土を何層にも分けて締め固めながら築造する構造です。
締固めが不十分なまま施工すると、供用後に圧縮や圧密が進み、不同沈下が発生する原因となります。
一方、十分な締固め管理や品質管理を行った盛り土では、沈下リスクを大きく低減できます。
そのため、盛り土か地山かではなく、適切な施工が行われているかが重要です。
豪雨や地震で被災しやすい
盛り土は自然地盤を掘削した切土に比べて、豪雨や地震の影響を受けやすい特徴があります。
特に、締固め不足や排水施設の機能低下があると、盛土内の間隙水圧が上昇し、法面崩壊や滑動につながるおそれがあります。
また、谷を埋めて造成した大規模な谷埋め盛土では、地震時に大きな変状が発生した事例も確認されています。
このため、排水計画や盛土の安定計算は、安全性を確保するうえで欠かせない設計項目です。
施工品質が安全性を左右する
盛り土の安全性は、施工品質によって大きく左右されます。
設計どおりの材料を使用し、適切な含水比で締め固め、所定の締固め度を確保することが基本です。
さらに、現場密度試験などで品質を確認しながら施工することで、沈下や変形を抑えやすくなります。
盛り土そのものが危険なのではなく、設計・施工・品質管理が適切に行われているかが、安全性を判断する重要なポイントです。
高度経済成長期に造成された盛り土は注意

盛り土のすべてが危険というわけではありません。
しかし、高度経済成長期に造成された一部の盛り土は、現在の技術基準や品質管理とは異なる環境で施工されており、注意が必要です。
ここでは、古い盛り土で特に注意したいポイントを解説します。
現在より品質管理が十分でない造成地がある
高度経済成長期は宅地造成が急速に進み、多くの住宅地が短期間で開発されました。
当時は現在ほど品質管理基準や施工管理体制が整備されておらず、締固め管理が十分でないまま造成された盛り土もあります。
そのため、長年の経過とともに沈下や変状が生じている造成地も見られます。
盛土内に廃棄物が混入している事例もある
古い造成地の中には、建設廃材やコンクリート殻など、本来盛土材として使用すべきではないものが混入している事例があります。
このような盛り土は材料の品質が均一ではなく、沈下や空洞化などの原因となることがあります。
現在では盛土材の品質や搬入土の管理が厳しく求められており、当時とは施工環境が大きく異なります。
造成記録が残っていないことも多い
古い盛り土では、設計図書や施工記録、品質管理記録が残っていないことがあります。
そのため、どのような材料で造成されたのか、どの程度締め固められたのかを確認できないケースもあります。
現在では、設計・施工・品質管理に関する記録を残すことが一般的であり、施工履歴を確認しながら維持管理を行える点も、昔の造成地との大きな違いです。
現在の盛り土が危険というわけではない
「盛り土はやめた方がいい」という意見がある一方で、現在施工されている盛り土まで危険というわけではありません。
近年は法改正によって規制が強化され、設計から施工、維持管理まで安全性を重視した取り組みが行われています。
そのため、現在の盛り土は適切な基準に基づいて計画・施工されることが基本となっています。
盛土等規制法によって安全基準が強化された
2023年に盛土等規制法が施行され、危険な盛り土を防ぐための規制が全国的に強化されました。
これにより、宅地造成だけでなく、森林や農地などで行われる盛り土も規制対象となり、災害防止の観点から許可や技術基準が定められています。
また、施工中の中間検査や工事完了時の完了検査なども導入され、安全性を確認する仕組みが整備されています。
設計・施工・品質管理によって安全性を確保している
現在の盛り土は、地盤調査の結果を踏まえて設計を行い、締固めや排水対策などの施工管理を実施しながら築造します。
施工中は現場密度試験などによって締固め品質を確認し、設計どおりの品質を満たしていることを確認します。
このように、設計・施工・品質管理を一体として行うことで、盛り土の安全性を確保しています。
現在も道路や宅地造成で広く採用されている
盛り土は、道路や宅地造成をはじめ、鉄道や河川堤防など、多くの土木構造物で採用されている工法です。
高低差の解消や軟弱地盤への対応など、盛り土でなければ実現できない計画も数多くあります。
重要なのは、盛り土という工法を避けることではありません。
地盤条件に適した設計と適切な施工・品質管理を行い、長期的な安全性を確保することが最も重要です。
盛り土で重要となるポイント
盛り土の安全性は、「盛り土だから危険」「地山だから安全」と単純に判断できるものではありません。
安全な盛り土を築造するためには、地盤条件を正しく把握し、適切な設計・施工・品質管理を行うことが重要です。
ここでは、盛り土で特に重要となる3つのポイントを解説します。
地盤条件に応じて設計する
盛り土の設計では、地盤調査によって地盤の強度や地下水位、土質などを把握することが基本です。
調査結果をもとに、盛り土の高さや法面勾配、必要に応じて地盤改良や擁壁を計画し、安全性を確保します。
地盤条件を十分に考慮せずに設計すると、沈下や法面崩壊などの原因となるため、現場条件に応じた設計が欠かせません。
締固め品質を確保する
盛り土は、土を一定の厚さごとに敷き均し、十分に締め固めながら築造します。
締固めが不十分なまま施工すると、供用後の沈下や変形につながるおそれがあります。
そのため、適切な含水比で施工するとともに、現場密度試験などによって締固め品質を確認しながら施工を進めることが重要です。
排水対策を適切に行う
盛り土の安定性を維持するためには、排水対策も重要な要素です。
盛り土内に雨水や地下水が滞留すると、土の強度が低下し、法面崩壊や滑動の原因となります。
このため、法面排水や地下排水などを適切に計画し、盛り土内へ過剰な水が浸透しないよう対策を講じます。
盛り土は適切な設計・施工・品質管理・排水対策を行うことで、安全性を確保できる工法です。
まとめ

「盛り土はやめた方がいい」と言われる理由には、過去に発生した盛土災害や不同沈下、高度経済成長期に造成された古い盛り土の存在があります。
しかし、現在施工される盛り土まで危険というわけではありません。
盛土等規制法による規制強化に加え、地盤条件に応じた設計、適切な締固め管理、排水対策などを実施することで、安全性を確保した盛り土が施工されています。
重要なのは、「盛り土だから危険」と判断するのではなく、どのような設計・施工・品質管理が行われているかを確認することです。
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