【解説】断面二次モーメントとは?|断面の形で決まる曲がりにくさと求め方・曲げ剛性EI

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断面二次モーメントが何を表す値なのか、ひと言で知りたい

長方形・H形・円の断面二次モーメントの求め方を確かめたい

断面二次モーメントと変形係数E・曲げ剛性EIの関係を整理したい

擁壁や山留めの構造計算では、たわみや変位を求める式に断面二次モーメントIが出てきます。

しかし、断面二次モーメントIの理解があいまいなまま計算を進めると、部材の向きを誤るおそれがあります。

そこでこの記事では、断面二次モーメントの意味、長方形・H形・円の式、断面係数との違い、山留め材と鉄筋コンクリートでの使い方を解説します。

結論から申しますと、断面二次モーメントとは、断面の形による部材の曲がりにくさを表す値のことです。

目次
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土質 太郎

建設コンサルタントに長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

■保有資格
・地質調査技士(現場技術・管理部門)
・1級土木施工管理技士
・地盤品質判定士

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【結論】断面二次モーメントは断面の形で決まる部材の曲がりにくさ

断面二次モーメントIとは、部材の断面の形と寸法から決まる曲がりにくさを表す値のことです。断面二次モーメントIの単位はmm4やcm4で、値が大きいほど部材は曲がりにくくなります。

ただし、部材の曲がりにくさは、断面の形だけでは決まりません。部材の曲がりにくさは、次の表の2つの値を掛け合わせて決まります。

記号名前何で決まるか表すもの
I断面二次モーメント断面の形と寸法断面の形による曲がりにくさ
E変形係数(ヤング係数)材料材料による曲がりにくさ
EI曲げ剛性材料と断面の両方部材全体の曲がりにくさ

同じ鋼材でも、断面の形が異なれば曲がりにくさは異なります。また、同じ断面でも、材料が異なれば曲がりにくさは異なります。

断面二次モーメントの定義と求め方

断面二次モーメントIとは、断面を細かい面積dAに分け、それぞれに中立軸からの距離yの2乗を掛けて足し合わせた値のことです。式では次のように表します。

I = ∫ y2 dA

距離yを2乗するので、中立軸から遠い位置にある面積ほど、断面二次モーメントを大きくします。例えば、同じ量の材料でも、中立軸から離して配置したほうが部材は曲がりにくくなります。

曲げを受ける部材の中立軸は、断面の図心(断面の重心)を通ります。断面二次モーメントを計算するときは、先に図心の位置を求めましょう。

図心からずれた軸まわりの値は平行軸の定理で換算する

図心を通らない軸まわりの断面二次モーメントは、平行軸の定理で求めます。

I = I0 + A・d2

  • I0:図心を通る軸まわりの断面二次モーメント
  • A:断面積
  • d:図心を通る軸から、求めたい軸までの距離

平行軸の定理は、T形やL形のように図心が断面の中央にない形や、複数の長方形を組み合わせた断面で使います。

長方形・H形・円の断面二次モーメントの式

よく使う断面の断面二次モーメントは、次の表の式で求めることができます。表の式は、どれも図心を通る軸まわりの値です。

断面の形断面二次モーメントI記号の意味
長方形bh3/12b:幅、h:高さ(曲げの方向の寸法)
円πd4/64d:直径
円形の管π(D4 − d4)/64D:外径、d:内径
H形(強軸まわり){BH3 − (B − t1)(H − 2t2)3}/12B:フランジの幅、H:高さ、t1:ウェブの厚さ、t2:フランジの厚さ
H形(弱軸まわり){2t2B3 + (H − 2t2)t13}/12強軸まわりと同じ

長方形・円・H形鋼・組合せ断面の断面二次モーメントと断面係数は、次の計算ツールで計算することができます。

長方形の断面二次モーメントは高さの3乗で大きくなる

長方形の式bh3/12では、断面二次モーメントは幅bの1乗と高さhの3乗に比例します。高さを2倍にすると断面二次モーメントは8倍になり、幅を2倍にしても断面二次モーメントは2倍にとどまります。

例えば、幅100mm・高さ200mmの角材を、縦に使う場合と横に寝かせて使う場合で比べてみましょう。断面積は、どちらも20,000mm2です。

角材の使い方幅b高さh断面二次モーメントI
縦に使う100mm200mm100 × 2003/12 ≒ 6.67 × 107 mm4
横に寝かせて使う200mm100mm200 × 1003/12 ≒ 1.67 × 107 mm4

同じ角材でも、縦に使うと断面二次モーメントは4倍になります。梁を縦長に使う理由は、断面積を増やさずに断面二次モーメントを大きくすることができるからです。

H形の式は大きな長方形から欠けた部分を引いて求める

H形の強軸まわりの式は、外形の長方形B × Hの断面二次モーメントから、ウェブの両脇の欠けた部分を引いた形です。H形は、面積の多くをフランジとして中立軸から遠い位置に置くので、少ない材料で大きな断面二次モーメントを得ることができます。

一方で、H形の断面二次モーメントは、向きによって大きく異なります。H形鋼を梁や親杭に使うときは、曲げを受ける向きが強軸まわりになるように配置しましょう。

なお、H形鋼の断面性能表の値は、ウェブとフランジのつなぎ目の丸み(フィレット)も含めて計算されているため、上の式の値とはわずかに異なります。設計では、JIS(日本産業規格)やメーカーの断面性能表の値を使いましょう。

変形係数(ヤング係数)Eは材料で決まる曲がりにくさ

変形係数Eとは、材料そのものの変形しにくさを表す値のことです。構造力学では、変形係数Eはヤング係数や弾性係数とも呼ばれます。

変形係数Eは、材料に生じる応力 σ をひずみ ε で割った値(E = σ/ε)で、単位はN/mm2です。変形係数Eが大きい材料ほど、同じ力を受けても伸び縮みが小さくなります。

変形係数Eは材料で決まるので、断面の形を変えても変化しません。一般に、鋼はコンクリートより変形係数Eが大きく、コンクリートは木材より変形係数Eが大きい材料です。また、コンクリートの変形係数Eは、設計基準強度によって異なります。

地盤の分野でも、地盤の変形しにくさを同じ記号Eの変形係数で表します。地盤の変形係数Eについては、次の記事に整理しています。

曲げ剛性EIは材料と断面の形を合わせた部材の曲がりにくさ

曲げ剛性EIとは、変形係数Eと断面二次モーメントIを掛けた値のことです。曲げ剛性EIは、材料による曲がりにくさと断面の形による曲がりにくさを合わせた、部材全体の曲がりにくさを表します。

梁のたわみの式では、曲げ剛性EIが分母に入ります。例えば、等分布荷重を受ける単純ばりと片持ちばりの最大たわみ δ は、次の表の式で求めます。

梁の形最大たわみ δ
単純ばり(等分布荷重)5wL4/(384EI)
片持ちばり(等分布荷重)wL4/(8EI)

表のwは単位長さあたりの荷重、Lは梁の長さ(スパン)です。どちらの式でも、たわみ δ は曲げ剛性EIに反比例します。

変えるもの曲げ剛性EIたわみ δ
変形係数Eを2倍にする2倍1/2
断面二次モーメントIを2倍にする2倍1/2
EとIの両方を2倍にする4倍1/4

梁の反力・曲げモーメント・たわみは、次のツールで計算することができます。

部材の変形を抑える方法は3つある

部材の変形を抑えるには、曲げ剛性EIを大きくする必要があります。曲げ剛性EIを大きくする方法は、次の3つです。

  1. 変形係数Eの大きい材料を使う
  2. 断面二次モーメントIの大きい断面を使う
  3. 変形係数Eと断面二次モーメントIの両方を大きくする

擁壁や山留めでは、使う材料が工法によっておおむね決まります。そのため、変形を抑えたいときは、材料と合わせて、断面の寸法や部材の向きも見直しましょう。長方形の断面なら、高さを増やすと断面二次モーメントは高さの3乗で大きくなります。

山留め材と鉄筋コンクリートでの断面二次モーメントの使い方

山留め材では親杭や鋼矢板の変位の計算に断面二次モーメントを使う

山留め工では、親杭(H形鋼)や鋼矢板の断面二次モーメントを使って、山留め壁の変位を計算します。山留め壁の曲げ剛性EIが小さいと、山留め壁の変位が大きくなり、背面の地盤の沈下につながるおそれがあります。

親杭横矢板工法では、親杭のH形鋼を、強軸まわりで土圧を受ける向きに建て込みます。鋼矢板の断面二次モーメントは、型式ごとに壁幅1mあたりの値が断面性能表に示されています。

切梁を使わない自立山留めは、山留め壁の変位が大きくなりやすい工法です。

横矢板の厚さは、木材の許容応力度と断面係数から決めます。横矢板の許容応力度は、次の記事に整理しています。

鉄筋コンクリートではひび割れの有無で断面二次モーメントが異なる

鉄筋コンクリートの梁や擁壁の壁では、断面二次モーメントの考え方が鋼材より少し複雑になります。理由は、コンクリートが引張りに弱く、ひび割れた部分が曲げに抵抗しなくなるからです。

ひび割れる前の断面二次モーメントは、コンクリートの全断面で求めます。ひび割れたあとの断面二次モーメントは、引張り側のコンクリートを無視し、圧縮側のコンクリートと鉄筋だけで求めます。

ひび割れたあとの計算では、鉄筋の断面積に変形係数Eの比(ヤング係数比n)を掛けて、コンクリートの断面に換算します。単鉄筋の長方形の梁の断面計算は、次のツールで計算することができます。

擁壁の壁を厚くすると、壁の断面二次モーメントは厚さの3乗で大きくなります。擁壁の壁厚の目安は、次の記事に整理しています。

断面二次モーメントと断面係数の違い

断面二次モーメントIはたわみ(変形)の計算に使い、断面係数Zは曲げ応力(強さ)の計算に使います。

断面係数Zとは、断面二次モーメントIを、中立軸から断面の端までの距離yで割った値(Z = I/y)のことです。曲げモーメントMを断面係数Zで割ると、断面の端に生じる曲げ応力 σ(σ = M/Z)が求まります。

項目断面二次モーメントI断面係数Z
単位mm4mm3
使う計算たわみ・変位曲げ応力・断面の強さの照査
長方形の式bh3/12bh2/6
円の式πd4/64πd3/32

部材の設計では、断面係数Zで曲げ応力が許容応力度に収まるかを確かめ、断面二次モーメントIでたわみや変位が許容値に収まるかを確かめます。

まとめ

断面二次モーメントIとは、断面の形による部材の曲がりにくさを表す値のことです。

  • 断面二次モーメントIは断面の形で決まり、長方形では高さの3乗で大きくなる
  • 変形係数(ヤング係数)Eは、材料で決まる曲がりにくさを表す
  • 変形係数Eと断面二次モーメントIを掛けた曲げ剛性EIが、部材全体の曲がりにくさになる
  • 変形を抑えるには、変形係数Eの大きい材料を使うか、断面二次モーメントIの大きい断面を使う(あるいはその両方)
  • たわみは断面二次モーメントIで、曲げ応力は断面係数Zで確かめる

梁や山留め壁の変形が大きいときは、材料と合わせて、断面の高さや部材の向きも見直してみてください。

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この記事を書いた人

土質 太郎のアバター 土質 太郎 地盤技術者

建設コンサルタントにて土構造物にかかわる設計業務に長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

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