ボーリング調査の箇所数を何箇所にすればよいのか、根拠が分からない
擁壁の延長が長いとき、ボーリングを何mごとに配置すればよいのか迷う
ボーリングの深さを「とりあえず10m」で決めてしまっている
ボーリング調査の箇所数の目安は、道路土工の指針や各機関の調査要領で異なるため、どの基準に準拠すべきか判断に迷いますよね。
ボーリングの箇所数が少ないと、地層の変化を見落とす原因になります。
地層の変化を見落とした調査は、目的物完成後の不同沈下や傾きにつながります。
そこでこの記事では、宅地造成におけるボーリング調査の箇所数の基準と、ボーリングの深さの決め方を解説します。
この記事を読むことで、ボーリングの箇所数と位置と深さを、根拠を持って決める方法が理解できるようになります。
結論から申しますと、ボーリングは擁壁タイプごとに1箇所、同一タイプの連続区間では40mごとに1箇所が基本です。また、調査計画では、切土と盛土の境界や旧河道の埋立箇所などの地層の変化点にもボーリングを入れましょう。
宅地造成のボーリング調査の箇所数と深さの基準
宅地造成のボーリング調査は、擁壁の配置と地層の変化点から箇所数を決め、支持層の確認から深さを決めます。ボーリング調査の箇所数と深さの基準は、次の表のとおりです。
| 項目 | 基準 | ボーリングの目的 |
|---|---|---|
| 擁壁タイプごとの配置 | 擁壁タイプごとに1箇所以上 | 擁壁タイプごとの設計に使う地盤の値を得る |
| 同一タイプの連続区間の配置 | 40mごとに1箇所(延長÷40mを切り上げ) | 延長方向の地層の変化をつかむ |
| 地層の変化点への追加 | 切土と盛土の境界、旧河道や池沼の埋立箇所など | 不同沈下や軟弱層のリスクを確かめる |
| 深さ(擁壁の直接基礎) | 支持層を3m連続して確認する深さ | 支持力と沈下の検討に使う |
| 深さ(盛土部・軟弱地盤) | 軟弱層を貫き、原地盤の支持層を確認する深さ | 沈下と全体の安定の検討に使う |
40mごとという間隔は、道路土工-擁壁工指針の調査頻度の目安「40~50mに1箇所程度」のうち、密な側の値です。本記事では、密な側の40mを推奨します。
ボーリング調査を擁壁タイプごとに1箇所行う理由
擁壁タイプごとに設計で使う地盤の値が異なる
擁壁タイプとは、擁壁の構造形式と高さで分けた標準断面の区分のことです。例えば、高さ2mのL型擁壁と高さ4mのL型擁壁は、別の擁壁タイプとして扱います。
擁壁タイプが異なると、基礎の幅、地盤に伝わる荷重、必要な支持力が異なります。したがって、設計者は擁壁タイプごとに、設置位置の直下で支持層の深さと地盤の強さを確かめる必要があります。
擁壁の設計者は、ボーリングで得たN値や土質から、地盤の許容支持力や摩擦係数を設定します。N値とは、標準貫入試験で、サンプラーを地盤に30cm打ち込むのに要した打撃回数のことです。
擁壁タイプごとのボーリングは、擁壁タイプごとの設計計算に、設置位置の実測値を使うための調査です。
擁壁の設置箇所でボーリングを少なくとも1箇所行うのが基本
擁壁の地盤調査は、擁壁の設置計画箇所で少なくとも1箇所以上行うのが基本です。延長が短い擁壁でも、擁壁タイプが異なれば、ボーリングを省かないようにしましょう。
同一タイプの擁壁が連続する区間でボーリングを40mごとに1箇所行う理由
同一タイプの擁壁が長く続く区間では、ボーリングを40mごとに1箇所配置しましょう。
理由は、同じ擁壁タイプでも、延長方向に支持層の深さや土質が異なる場合があるからです。
擁壁のボーリング間隔の目安は40~50m程度
本記事では、擁壁や構造物のボーリング間隔の目安を次の表に整理します。
| 基準・資料 | 対象 | ボーリングの配置の目安 |
|---|---|---|
| 道路土工-擁壁工指針(日本道路協会、平成24年7月) | 擁壁 | 擁壁延長40~50mに1箇所程度、かつ擁壁の設置計画箇所で少なくとも1箇所以上 |
| 北陸地方整備局 設計要領 地質調査の手引き(案) | 道路の擁壁(詳細設計) | 延長50m以上は計画位置の両端、延長が長い場合は50mに1箇所 |
| 新体系土木工学15 土質調査法(土木学会) | 大型建築物 | 調査孔の間隔は均一地盤で50m、普通地盤で30m、不均一地盤で15m |
宅地造成の擁壁は、背面に住宅が建つことが多いため、擁壁の沈下や傾きが住宅の被害に直結します。
地層の変化点にボーリングを追加する理由
地層の変化点とは、切土と盛土の境界や旧河道の縁など、地盤の性質が急に変化する場所のことです。
地層の変化点の周辺では、不同沈下や軟弱層による沈下が起きるおそれがあります。
したがって、地層の変化点のボーリングは、40mごとの配置とは別に追加するのが基本です。
切土と盛土の境界でボーリングを追加する理由
切土と盛土の境界は、硬い地山と柔らかい盛土が隣り合うため、擁壁の不同沈下が起きやすい場所です。
不同沈下とは、構造物の沈下量が場所によって異なる現象のことです。
切土と盛土の境界の位置は、造成計画の切盛図や、造成前の地形図から読み取りましょう。
切土と盛土の境界のボーリングは、境界付近の盛土側に配置し、盛土の厚さと元の地山の深さを確かめましょう。
旧河道や池沼を埋め立てた箇所でボーリングを追加する理由
旧河道とは、かつて河川の流路だった場所が、砂や泥で埋められてできた土地のことです。
旧河道や埋め立てた池沼は、地震時の液状化のリスクが大きい地形です。
また、旧河道の埋立箇所には、柔らかい粘性土や緩い砂が残っている場合があります。
現地が平らに造成されていても、旧河道の帯が計画地の中を横切っている場合があります。
旧河道の位置は、明治時代以降の旧版地形図や過去の空中写真、国土地理院の地形分類図で確かめることができます。
ボーリングは、旧河道の帯の中央と縁の両方に配置し、軟弱層の厚さの変化をつかみましょう。
ボーリング調査で安全性を確かめる地形と地盤
次の地形や地盤では、ボーリング調査や土質試験などで安全性を確かめる必要があります。
- 長大のり面(のり高15mを超えるのり面)と大規模盛土造成地
- 軟弱地盤
- 土石流の発生しやすい荒廃した渓流や、地すべりの徴候を示す地形
- 崖すい地形、凹地地形、崩壊跡地
- 断層破砕帯
- おぼれ谷の埋め立て
- 雑物の処理された地盤
- 湧水のある地盤
おぼれ谷とは、土地の沈降や海面の上昇で水没した谷が、堆積物で埋まった谷のことです。おぼれ谷の埋立地は、軟弱な粘性土や緩い砂質土が多く、盛土と地山の境界で不同沈下が起きやすい地盤です。
上記の地形や地盤が計画地にある場合は、該当する範囲の中にもボーリングを配置しましょう。
ボーリング調査の深さの決め方
ボーリングの深さは、擁壁の基礎の形式と、設計で検討する項目から決めます。ボーリングの深さの目安は、次の表のとおりです。
| 調査の対象 | ボーリングの深さの目安 | 深さの範囲で確かめる内容 |
|---|---|---|
| 擁壁の直接基礎 | 支持層を3m連続して確認する深さ | 支持力と、基礎幅の2倍程度の範囲の軟弱層の有無 |
| 杭基礎や地盤改良を想定する擁壁 | 支持層を確認してから、さらに5m程度 | 杭の先端や改良体の下の地盤 |
| 盛土部 | 普通の地盤では盛土の高さ程度、軟弱な地盤では支持層を確認する深さ | 原地盤の軟弱層と圧密沈下 |
| 切土部 | 計画面から2~3m程度下まで | 計画面の下の弱い層や岩質の変化 |
| 円弧すべりを検討する箇所 | すべり面が通るおそれのある地層の下まで | 全体の安定の計算に使う地層 |
擁壁の直接基礎のボーリングは支持層を3m連続して確認する
支持層の目安は、粘性土でN値20以上、砂質土と礫質土でN値30以上です。
支持層のN値が出た深さで、ボーリングを止めないようにしましょう。
支持層を3m連続して確認する理由は、礫や玉石を打って出た一時的に高いN値を、支持層と誤認しないためです。
また、基礎の荷重は基礎の下へ広がるため、基礎幅の2倍程度の深さの範囲に柔らかい層がないことも確かめましょう。
ボーリング調査の箇所数と深さを決めるときの注意点

許可権者の技術的基準でボーリングの調査頻度を確認する
許可権者とは、盛土規制法の許可を出す都道府県知事や、指定都市と中核市の長のことです。
許可権者の技術的基準の調査頻度が本記事の目安と異なる場合は、許可権者の基準を優先しましょう。
ボーリング調査の結果を見てボーリングを追加する
ボーリング調査は、結果を見ながら段階的に進めるのが基本です。1回目の調査で地層の変化が著しい場合は、ボーリングの中間地点や擁壁の設置位置の直下に追加しましょう。
また、盛土や埋土は場所によって材料が異なるため、盛土や埋立地の調査はできるだけ密な間隔で行いましょう。
ボーリング調査の箇所数の基準のまとめ

以上。本記事ではボーリング調査の箇所数の基準と深さの決め方を解説しました。
本記事のまとめは以下のとおりです。
- ボーリングは、擁壁タイプごとに少なくとも1箇所行う
- 同一タイプの擁壁が連続する区間では、40mごとに1箇所配置する(延長÷40mを切り上げ)
- 切土と盛土の境界、旧河道や池沼の埋立箇所などの地層の変化点には、ボーリングを追加する
- 擁壁の直接基礎のボーリングは、支持層を3m連続して確認する深さまで掘る
まずは、擁壁の計画図に擁壁タイプと延長を書き出し、ボーリングの箇所数を数えてみてください。
あわせて、旧版地形図と切盛図で地層の変化点を確かめ、ボーリングの位置を決めましょう。


