重力式擁壁ともたれ式擁壁は形状が似ているため、違いが分かりにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。
どちらも無筋コンクリート擁壁ですが、設置に適した場所が異なります。
重力式擁壁は、主に高さ1m程度までの盛土部に用いられます。
一方、もたれ式擁壁は、安定した切土地山で切土面の安定勾配を確保できない場合に用いられます。
この記事では、重力式擁壁ともたれ式擁壁の違いと、宅地造成での使い分けを解説します。
重力式擁壁は主に低い盛土部に用いる

重力式擁壁は、コンクリートの自重によって土圧に抵抗する無筋コンクリート擁壁です。
宅地造成では、主に高さ1m程度までの低い盛土部に用いられます。
高さ1m程度までで採用されることが多い
重力式擁壁は構造が単純で、鉄筋の加工や組立てを必要としません。
擁壁高が低い場合は、必要なコンクリート量も少なく、施工しやすいことから経済的な構造となります。
擁壁高が大きくなるほどコンクリート量が増える
重力式擁壁は、壁体の自重によって転倒や滑動に抵抗します。
擁壁高が大きくなると土圧も増加するため、壁体を厚くして自重を確保しなければなりません。
その結果、コンクリート量が増えるだけでなく、擁壁の重量によって基礎地盤に作用する地盤反力も大きくなります。
十分な支持力を確保できない場合は、地盤改良などの対策が必要です。
擁壁高が大きい場合はL型擁壁の方が経済的になりやすい
L型擁壁は、鉄筋コンクリートの曲げ抵抗と底版上に載る土の重量を利用して安定を確保します。
重力式擁壁のように壁体全体を厚くする必要がないため、擁壁高が大きい場合でもコンクリート量と擁壁自重を抑えやすい構造です。
そのため、擁壁高が大きい場合は、重力式擁壁よりもL型擁壁の方が経済的になる場合が多くなります。
もたれ式擁壁は安定した切土地山に用いる

もたれ式擁壁は、壁体を背面側へ傾斜させ、背面土にもたれるように設置する無筋コンクリート擁壁です。
安定した切土地山を前提とする構造であり、主に切土法面を設ける十分なスペースがない場所に用いられます。
切土面の安定勾配を確保できない場合に採用する
切土面は、土質に応じた安定勾配で施工することが基本です。
しかし、安定勾配で切土法面を設けると、法面が宅地側へ広がり、必要な宅地面積を確保できない場合があります。
このような場所では、切土面を立てて宅地面積を確保するため、もたれ式擁壁が採用されます。
大きな地盤支持力が必要になる
もたれ式擁壁は、コンクリートの自重によって土圧に抵抗する構造です。
重い壁体を比較的狭い基礎底面で支持するため、基礎地盤には大きな支持力が必要になります。
緩い地山や盛土部には適さない
もたれ式擁壁は、壁体を背面土にもたせる構造であるため、安定した切土地山への設置が前提となります。
緩い地山では、擁壁を支えるために必要な地盤支持力を確保できないおそれがあります。
また、盛土は切土地山よりも変形しやすく、もたれ式擁壁を安定してもたせる背面土として適していません。
重力式擁壁と同じ無筋コンクリート擁壁であっても適した用途は異なるため、もたれ式擁壁を盛土部へ安易に採用してはいけません。
重力式擁壁ともたれ式擁壁の違い
重力式擁壁ともたれ式擁壁の違いを下表に整理しました。
| 比較項目 | 重力式擁壁 | もたれ式擁壁 |
|---|---|---|
| 主な適用箇所 | 低い盛土部 | 安定した切土地山 |
| 主な採用条件 | 高さ1m程度までの盛土 | 切土面の安定勾配を確保できない場合 |
| 地盤条件 | 擁壁高に応じた支持力が必要 | 大きな支持力を持つ地山が必要 |
| 主な比較対象 | L型擁壁 | 大型ブロック積擁壁、法面対策工 |
まとめ:宅地造成では地形と地盤条件から擁壁形式を選ぶ

宅地造成で擁壁形式を選ぶ際は、擁壁高や工事費だけでなく、盛土と切土のどちらに設置するのかを確認する必要があります。
低い盛土部では重力式擁壁が適していますが、擁壁高が大きい場合は、L型擁壁を含めて経済性を比較します。
一方、安定した切土地山で切土面の安定勾配を確保できない場合は、もたれ式擁壁や大型ブロック積擁壁を検討します。
同じ無筋コンクリート擁壁であっても適用条件は異なるため、費用や形状だけで判断せず、地形と地盤条件に適した擁壁形式を選びましょう。
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