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【擁壁工】擁壁の隙間は大丈夫?|伸縮目地の役割と危険な隙間の見分け方

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擁壁の表面に縦方向の隙間を見つけると、「ひび割れて壊れ始めているのではないか」と不安になりますよね。

しかし、コンクリート擁壁に一定間隔で設けられた直線状の隙間は、多くが「伸縮目地」です。

伸縮目地とは、気温や乾燥によるコンクリートの膨張・収縮に追随し、不規則なひび割れを防ぐために設ける重要な構造上の工夫です。

ただし、隙間の左右に段差がある、上部だけ大きく開いている、土砂が流出しているといった変状があれば、擁壁が移動している可能性を考える必要があります。

この記事では、正常な伸縮目地と点検が必要な隙間の違いを解説します。

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土質 太郎

建設コンサルタントに長年従事しており、宅地造成の地盤分野に特化した情報を発信しています。

■保有資格
・地質調査技士(現場技術・管理部門)
・1級土木施工管理技士
・地盤品質判定士

擁壁の隙間の多くは伸縮目地

擁壁の伸縮目地は20mに1箇所(行政によっては10mに1箇所)以上の設置が義務付けられています

伸縮目地とは、長いコンクリート擁壁を一定の区間に分けるため、縦方向に設ける隙間です。

コンクリート擁壁は硬く頑丈に見えますが、温度や乾燥状態の変化に伴って、わずかに膨張・収縮します。

長い擁壁を隙間なく一体で造ると、この動きが拘束され、擁壁の途中にひび割れが集中します。

そこで、あらかじめ伸縮目地を設け、コンクリートの動きを目地部分で吸収します。

つまり、一定間隔で整然と設けられた隙間は、擁壁の欠陥ではありません。

ひび割れを抑えるため、設計・施工段階から設けられたものです。

伸縮目地と危険な隙間の違い

正常な伸縮目地と、擁壁の変形によって生じた隙間は、形状や周辺の状態からある程度区別できます。

確認項目正常な伸縮目地点検が必要な隙間
形状上から下まで直線状斜め・枝分かれ・不規則
配置擁壁の途中に一定間隔である不規則な位置に突然ある
隙間の幅おおむね均一上部または下部だけ広い
左右の位置段差やずれがない前後・上下にずれている
周辺の状態傾きやはらみがない傾き・はらみ・沈下がある
土砂の流出見られない土や濁った水が出ている

伸縮目地らしい形をしていても、目地を境に擁壁が前後・上下へずれているなら正常とはいえません。

隙間そのものだけでなく、擁壁全体の状態を確認することが重要です。

正常な伸縮目地の見分け方

次の特徴がそろっていれば、正常な伸縮目地と判断できます。

  • 擁壁に対して垂直な直線状である
  • 擁壁の上端から下端まで連続している
  • 同じような隙間が一定間隔で設けられている
  • 隙間の幅が上部と下部で大きく変わらない
  • 隙間に板状の目地材やシーリング材が見える
  • 目地の左右に前後・上下の段差がない
  • 擁壁に傾きやはらみがない

目地材は、コンクリート同士が直接ぶつかるのを防ぎ、伸縮を受け止める材料です。

経年劣化によって目地材が痩せたり、表面のシーリング材が切れたりしても、それだけで擁壁が危険とは判断できません。

ただし、目地材の劣化と同時に隙間の拡大や段差が生じているなら、専門家による確認が必要です。

点検が必要な擁壁の隙間

次の状態が見られるときは、単なる伸縮目地として扱わず、擁壁の変状を疑ってください。

  • 隙間の上部または下部だけが大きく開いている
  • 目地の左右で擁壁が前後にずれている
  • 目地の左右に上下の段差がある
  • 隙間から土砂や濁った水が流出している
  • 隙間から新しいひび割れが伸びている
  • 擁壁が前方へ傾いている
  • 擁壁の中央部がはらみ出している
  • 地震や大雨の後に隙間が急に広がった

特に注意したいのは、隙間からの土砂流出です。

擁壁背面の土砂が流れ出すと、地中に空洞が形成され、宅盤の沈下や擁壁の変形につながります。

目地付近だけでなく、擁壁上部の地面に亀裂や陥没がないかも確認してください。

伸縮目地をモルタルで埋めてはいけない

正常な伸縮目地を見つけても、自己判断でモルタルを詰めてはいけません。

伸縮目地は、コンクリートの動きを吸収するための隙間です。

硬いモルタルで埋めると動きに追随できず、充填したモルタルが割れたり、目地の周辺に新たなひび割れが生じたりします。

目地材やシーリング材が劣化しているときは、伸縮性のある材料で補修するのが基本です。

ただし、補修前に目地の開きや擁壁のずれがないことを確認しなければなりません。

変状が進んでいる擁壁では、表面だけを塞いでも根本的な解決にはなりません。

擁壁の隙間は写真を残して定期的に記録する

現時点で明らかな異常がなくても、隙間の状態は定期的に確認してください。

確認するときは、次の内容を記録すると変状時に説明しやすいです。

  1. 擁壁全体の写真
  2. 隙間を正面から撮影した写真
  3. 定規を添えた隙間幅の写真
  4. 撮影日
  5. 大雨や地震の前後で変化したか

判断の目安は次のとおりです。

擁壁の状態対応
直線状で幅が均一、ずれもない定期的に観察する
以前より隙間が広がっている専門家へ点検を依頼する
前後・上下のずれがある早めに点検を依頼する
土砂流出、傾き、はらみがある擁壁へ近づかず速やかに相談する
大雨や地震後に急変した周囲の安全を確保して行政または専門家へ相談する

なお、擁壁の隙間を確認するときは、擁壁の下に長時間立ったり、上部から身を乗り出したりしないでください。

まとめ

コンクリート擁壁に一定間隔で設けられた直線状の隙間は、多くが伸縮目地です。

伸縮目地は、温度変化や乾燥に伴うコンクリートの膨張・収縮に追随し、ひび割れを防ぐために設けられています。

一方で、隙間の左右に段差がある、上部または下部だけ開いている、土砂が流出しているといった状態は、擁壁の変形を示すサインです。

正常な伸縮目地をモルタルで塞がず、異常が疑われるときは擁壁の設計や地盤に詳しい専門家へ点検を依頼してください。

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