造成計画や擁壁工事の見積書を見て、「現場打ちコンクリート擁壁とは、どのような擁壁なのか」と疑問を持つ人は多いのではないでしょうか?
結論から申しますと「現場打ち」とは擁壁の構造形式ではなく、コンクリートの製作方法のひとつで、施工場所で型枠や鉄筋を組み、コンクリートを打設して造ることを指します。
無筋コンクリート造の重力式擁壁も、鉄筋コンクリート造のL型擁壁も、現地でコンクリートを打設すれば現場打ち擁壁です。
本記事では、現場打ちコンクリート擁壁の種類や施工手順、プレキャスト擁壁との違い、施工上の注意点を解説します。
現場打ちコンクリート擁壁とは

現場打ちコンクリート擁壁とは、施工場所で型枠を組み、その中へコンクリートを打設して造る擁壁です。
鉄筋コンクリート造では、コンクリートを打設する前に鉄筋を組み立てます。
一般には、生コン工場で製造されたレディーミクストコンクリートを現場へ運搬し、コンクリートポンプ車などを使って型枠内へ打設します。
工場で製造した擁壁を現地へ運んで据え付けるプレキャスト擁壁とは、製作場所と施工方法が異なります。
現場条件に応じて擁壁高や底版幅、折れ点などを設定できるため、規格製品では対応できない形状にも適用できます。
現場打ちで造られるコンクリート擁壁の種類
現場打ちコンクリート擁壁には、無筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造があります。
無筋コンクリート造擁壁

無筋コンクリート造の代表が重力式擁壁です。
壁体を厚くしてコンクリート自体の重量を確保し、その重さによって背面から作用する土圧に抵抗します。
構造が単純で施工しやすい反面、擁壁が高くなるほど壁体が大きくなるため、比較的低い擁壁や良好な支持地盤に適しています。
鉄筋コンクリート造擁壁

鉄筋コンクリート造には、L型擁壁、逆T型擁壁、逆L型擁壁などがあります。
たて壁と底版を鉄筋コンクリートで一体化し、鉄筋によって土圧で生じる曲げに抵抗する構造です。
重力式擁壁より壁体を薄くできるため、宅地造成における敷地境界付近でも採用されています。
現場打ちコンクリート擁壁の施工手順

現場打ちコンクリート擁壁は、一般に次の手順で施工します。
- 擁壁位置を掘削して基礎地盤を確認する
- 基礎砕石を敷き均して十分に締め固める
- 均しコンクリートを打設する
- 鉄筋と型枠を組み立てる
- 水抜き穴を所定の位置へ配置する
- コンクリートを打設して締め固める
- コンクリートを養生して型枠を撤去する
- 透水層を施工して擁壁背面を埋め戻す
鉄筋コンクリート造では、底版とたて壁を分けて打設する方法が一般的です。
そのため、打継ぎ位置を設計図に従って設定し、底版とたて壁が一体となって抵抗できるように施工します。
また、背面土の埋戻しは、コンクリートが所定の強度に達したことを確認してから行います。
現場打ち擁壁とプレキャスト擁壁の違い

現場打ち擁壁とプレキャスト擁壁は、どちらも宅地の高低差を支える擁壁ですが、製作方法や得意な現場条件が異なります。
| 比較項目 | 現場打ち擁壁 | プレキャスト擁壁 |
|---|---|---|
| 製作場所 | 施工現場 | コンクリート製品工場 |
| 形状 | 現場条件に合わせて設計できる | 規格製品から選定する |
| 現場作業 | 配筋・型枠・打設・養生が必要 | 基礎施工後に製品を据え付ける |
| 工期 | 現場作業が多く長くなりやすい | 据付け中心で短縮しやすい |
| 品質 | 現場の施工管理に左右される | 工場管理により安定している |
| 搬入 | 大型製品の運搬は不要 | トレーラーやクレーンが必要 |
| 費用 | 型枠・鉄筋・打設費が必要 | 製品・運搬・据付け費が必要 |
現場打ち擁壁とプレキャスト擁壁のどちらが安いかは、擁壁高、延長、形状、搬入路、クレーンの配置、工期などによって変わります。
プレキャスト擁壁の特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
現場打ちコンクリート擁壁が選ばれる条件

現場打ちコンクリート擁壁は、次のような現場に適しています。
- 擁壁高が途中で変化する
- 折れ点や隅角部が多い
- プレキャスト製品の規格断面が適合しない
- 大型製品を搬入する経路を確保できない
- クレーンによる据付けが難しい
- 杭基礎などの基礎構造を個別に設計する
- 既設構造物との取合いに合わせた形状が必要
一方、擁壁高がそろった直線区間が長く、大型車両やクレーンが進入できる現場では、プレキャスト擁壁による工期短縮が期待できます。
現場打ち擁壁の形状に対応できることだけで決めず、施工条件や品質管理体制まで比較して選定することが重要です。
現場打ちコンクリート擁壁の施工上の注意点

国土交通省の盛土等防災マニュアルでは、基礎地盤、鉄筋の継手・定着、コンクリートの打設・養生、背面土の埋戻し、排水などが施工上の留意事項として示されています。
基礎地盤が設計条件を満たしているか確認する

擁壁本体が設計どおりに造られていても、基礎地盤の支持力が不足していれば、沈下や傾斜が生じます。
掘削後の地盤が設計時に想定した地耐力を有しているかを確認し、支持力を確保できないときは、置換えや地盤改良などを検討します。
配筋とコンクリートの品質を確保する

鉄筋コンクリート造では、主筋の位置、かぶり、継手長、定着長を設計図どおりに確保します。
コンクリート打設時には、鉄筋や型枠が移動しないように管理し、バイブレーターで十分に締め固めます。
締固めが不足すると、コンクリート内部に空隙やジャンカが生じ、必要な強度や耐久性を確保できません。
現場打ち擁壁の底版にはテーパーを設けない

現場打ち擁壁の底版は一定の厚さとし、プレキャスト擁壁に見られるテーパー形状をそのまま採用してはいけません。
底版にテーパーを設けると、狭くなる部分へコンクリートが回らず、ジャンカが発生する原因になります。
工場設備で品質を確保できるプレキャスト製品と、型枠内へ現地で打設する現場打ち擁壁では、施工条件が異なります。
プレキャスト製品の断面を現場打ち擁壁へ流用せず、現場施工に適した断面を設計する必要があります。
排水施設を確実に施工する

擁壁背面に水がたまると、擁壁へ設計で想定していない水圧が作用します。
水抜き穴と透水層を設計図どおりに施工し、水抜き穴の背面には土砂の流出を防ぐ吸い出し防止材を設けます。
埋戻し時には水抜き穴や透水層を傷つけないように注意しながら、背面土を層ごとに締め固めましょう。
まとめ

本記事のまとめは以下のとおりです。
- 現場打ちコンクリート擁壁は、施工場所で型枠を組み、コンクリートを打設して造る
- 現場打ちは製作方法であり、無筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造がある
- 現場条件に合わせて形状を設計できる反面、現場での品質管理が重要になる
- プレキャスト擁壁は工期と品質の安定性に優れる
- 基礎地盤、配筋、打設、排水、埋戻しの各工程を設計図どおりに施工する
- 現場打ち擁壁の底版にはテーパーを設けない
現場打ちコンクリート擁壁は、規格製品では対応できない形状や施工条件に適応できる工法です。
ただし、形状の自由度が高いからこそ、設計だけでなく現場での打設や排水まで一貫して管理する必要があります。
現場打ちとプレキャストの特徴を比較し、計画地の条件に適した擁壁を選定しましょう。
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