擁壁の水抜き穴から水と一緒に土が出ていると、「このまま擁壁が崩れないだろうか」と不安になりますよね。
水抜き穴から土が継続して流れ出ているなら、主な原因は水抜き穴の裏側に設置する吸出し防止材の破損または不備です。
吸出し防止材が設置されていない、位置がずれている、破損しているといった不具合があると、水の流れとともに擁壁背面の土まで水抜き穴から排出されます。
土の流出を放置すると、擁壁背面に空洞が生じ、地盤の沈下や擁壁の変状につながります。
個人の判断で応急処置するのではなく、専門家へ点検を依頼してください。
擁壁の水抜き穴から土が出る主因は吸出し防止材の破損または不備

擁壁の水抜き穴から土が出る主な原因は、吸出し防止材が正常に機能していないことです。
吸出し防止材とは、水抜き穴の背面側に設置し、水だけを通して土砂の流出を防ぐ材料です。
新しく施工する擁壁では、水抜き穴の裏側に吸出し防止材を設置し、その周囲に砕石や砂利などの透水層を設けます。
正常な状態であれば、擁壁背面に浸透した水は透水層を通り、水抜き穴から排出されます。
一方、次のような不備があると、水と一緒に背面土が流出します。
- 吸出し防止材が設置されていない
- 吸出し防止材の位置がずれている
- 吸出し防止材が破損している
- 吸出し防止材と水抜き穴の間に隙間がある
古い擁壁では、現在一般的に使用されている吸出し防止材が設置されていないこともあります。
ただし、擁壁の外側から見ただけでは、吸出し防止材の有無や施工状態を確認できません。
水抜き穴から土が繰り返し出ているなら、内部の排水構造に不具合があると考えて点検が必要です。
土が出続けると擁壁背面に空洞が生じる

水抜き穴から土が流出すると、擁壁背面の土量が少しずつ減っていきます。
流出が長期間続けば、擁壁背面や擁壁上部の地盤に空洞が形成されます。
空洞が拡大すると、次のような変状が発生します。
| 確認する場所 | 発生する変状 |
|---|---|
| 擁壁上部の地盤 | 沈下、くぼみ、陥没 |
| 擁壁付近の舗装 | ひび割れ、段差 |
| 水抜き穴 | 土砂の詰まり、継続的な濁水 |
| 擁壁本体 | ひび割れ、はらみ、傾き |
| 擁壁上部の排水溝 | ずれ、破損、周囲の沈下 |
特に注意したいのが、擁壁の上にある地盤の沈下やくぼみです。
水抜き穴から流出した土の量が多ければ、その分だけ擁壁背面に空洞が生じている可能性が高まります。
目に見える土砂量が少なくても、長期間にわたって流出が続いているなら軽視できません。
水抜き穴から出る土の危険度を確認するポイント

水抜き穴の周辺だけでなく、擁壁全体と擁壁上部の地盤を確認してください。
次の変状が1つでも確認されたら、早めに専門家へ点検を依頼しましょう。
- 雨が降るたびに土が流れ出る
- 水抜き穴の下に土砂が堆積している
- 水抜き穴が土で詰まっている
- 茶色く濁った水が継続して出ている
- 擁壁上部の地盤に沈下やくぼみがある
- 擁壁付近の舗装や排水溝が沈下している
- 擁壁にひび割れ、はらみ、傾きがある
- 擁壁の継ぎ目からも水や土が出ている
一度だけ少量の濁水が出たという情報だけでは、擁壁の危険性を断定できません。
しかし、土砂の流出が繰り返されている、流出量が増えている、地盤の沈下を伴っている状態は、背面土の流出が進行している兆候です。
大雨の後は土砂の流出量が増えやすいため、雨がやんで安全を確保したうえで状態を確認してください。
水抜き穴をモルタルなどで塞いではいけない

土が出ているからといって、個人の判断で水抜き穴をモルタルや布などで塞いではいけません。
水抜き穴は、擁壁背面にたまった水を外へ排出するための設備です。
穴を塞ぐと擁壁背面の水位が上昇し、擁壁に作用する水圧が増加します。
土砂の流出を止めるつもりでも、擁壁の安定性を低下させる対処になります。
また、棒や高圧洗浄機を水抜き穴の奥まで差し込む行為も避けてください。
吸出し防止材をさらに破損させたり、背面土を崩して流出を拡大させたりするおそれがあります。
所有者が行う作業は、穴の入口にある落ち葉や空き缶など、明らかな異物を安全に取り除く程度に留めましょう。
点検を依頼する前に記録しておくこと

専門家へ点検を依頼する前に、現在の状態を写真や動画で記録しておくと状況を伝えやすくなります。
記録する内容は次のとおりです。
- 土が出ている水抜き穴の位置
- 水抜き穴から出た土砂の量
- 雨天時と晴天時の排水状況
- 擁壁全体の写真
- 擁壁上部の地盤や舗装の状態
- ひび割れ、はらみ、傾きの有無
- 土砂の流出に気付いた時期
- 流出量が増えているか
擁壁の高さや延長、築造時期、確認申請書類や造成図面の有無も分かる範囲で整理してください。
ただし、高所や道路上など危険な場所に立ち入って撮影する必要はありません。
擁壁の点検は専門家へ依頼する

水抜き穴から土が出ているときは、宅地擁壁の調査や設計を扱う専門家へ点検を依頼してください。
相談先としては、次のような専門家が挙げられます。
- 宅地擁壁を扱う建設コンサルタント
- 地盤調査会社
- 擁壁設計に詳しい技術士
- 擁壁や造成に詳しい建築士
- 擁壁工事の調査・設計実績がある施工会社
どこへ依頼すればよいか分からないときは、市区町村の建築指導、開発指導、宅地造成に関する窓口へ相談してください。
自治体が民有擁壁を直接点検するとは限りませんが、相談窓口や必要な手続きについて案内を受けられます。
点検では、水抜き穴だけでなく、擁壁背面の空洞、上部地盤の沈下、排水施設、擁壁本体の変状を総合的に確認する必要があります。
まとめ

擁壁の水抜き穴から土が出る主な原因は、水抜き穴の裏側にある吸出し防止材の不備です。
土砂の流出を放置すると、擁壁背面に空洞が生じ、擁壁上部の沈下や擁壁本体の変状につながります。
水抜き穴を塞ぐと背面の水圧が上昇するため、所有者の判断でモルタルなどを詰めてはいけません。
水抜き穴の下に土がたまっている、雨のたびに濁水が出る、擁壁上部が沈下しているといった変状が確認されたら、宅地擁壁に詳しい専門家へ点検を依頼しましょう。
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