透水マットと吸出し防止材は、どちらも擁壁背面の排水に関係する材料ですが、役割と使用方法は異なります。
吸出し防止材は、水抜穴から背面土や裏込砕石が流出するのを防ぐため、水抜穴に設置する材料です。
一方、擁壁用透水マットは、擁壁背面に浸透した水を集めて水抜穴へ導く排水材です。
透水マットと吸出し防止材の違い
両者の違いは次のとおりです。
| 項目 | 透水マット | 吸出し防止材 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 擁壁背面の排水 | 土砂や裏込材の流出防止 |
| 設置範囲 | 擁壁背面へ面的に設置 | 水抜穴の背面に設置 |
| 透水層との関係 | 砕石などによる透水層の代替 | 透水層の代わりにはならない |
| 吸出し防止機能 | フィルター層が担う | 材料自体の主目的 |
| 構造計算への影響 | 壁面摩擦角の設定に影響する | 構造計算には影響しない |
吸出し防止材は、水を通しながら土粒子の移動を抑えるフィルター材です。
砕石や栗石による透水層を設ける工法では、水抜穴から細粒分や裏込材が流出しないよう、水抜穴の入口に吸出し防止材を設置します。
透水マットは排水と吸出し防止を兼ねる
擁壁用透水マットは、排水用の芯材を透水フィルターで覆った構造です。
擁壁背面へ浸透した水はフィルターを通って芯材へ入り、透水マットの内部を流れて水抜穴から排出されます。
同時に、表面のフィルターが背面土の侵入を抑えるため、排水機能だけでなく吸出し防止機能も持っています。
よって、擁壁用透水マットを水抜穴まで連続して正しく設置すれば、水抜穴の背面へ別の吸出し防止材を重ねる必要はありません。
ただし、水抜穴の先端や管口が透水マットへ接触すると、埋戻し時にマットを損傷するおそれがあります。
このため、水抜穴の背面には透水マット保護用ネットまたは接続器具を取り付けます。
施工時に勝手に変更してはいけない

設計図で砕石による透水層と吸出し防止材が指定されているとき、施工者の判断で透水マットへ変更してはいけません。
石油系素材の透水マットを擁壁背面へ設置すると、土圧計算に用いる壁面摩擦角の設定が変わるためです。
土とコンクリートの接触面について、常時の壁面摩擦角を2φ/3とする設計基準では、石油系透水マットを使用するとφ/2へ変更します。
壁面摩擦角が変われば擁壁に作用する主働土圧や部材応力の計算結果へ影響します。
変更時は採用した設計基準と土圧作用面を確認し、必要な照査をやり直さなければなりません。
よって、施工時に砕石透水層から透水マットへ置き換えたい場合は、必ず擁壁の構造設計者に確認するようにしましょう。
設計図書では工法を明確に区別する

設計図書には、砕石透水層と吸出し防止材を使用するのか、擁壁用透水マットを使用するのかを明記します。
透水マットを採用するなら、その旨を構造図に示す必要があります。
なお、透水マットの使用については各行政で擁壁高に制限がある場合があるので、各行政の技術基準を確認するようにしましょう。
まとめ

吸出し防止材は、水抜穴から土砂や裏込材が流出するのを防ぐ局所的なフィルター材です。
透水マットは、砕石などによる透水層の代わりに擁壁背面へ設置する排水材であり、フィルター層によって吸出し防止の役割も担います。
そのため、透水マットを適切に設置すれば、別の吸出し防止材を重ねる必要はありません。
ただし、透水マットへの変更は壁面摩擦角と構造計算に影響します。
設計図書の指定を施工時に変えたい場合は、採用基準と計算条件を確認したうえで変更するようにしましょう。
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