擁壁の上に建つ住宅では、転落防止や目隠しのため、擁壁の天端にフェンスを後付けしたいことがありますよね。
ホームセンターや通販では後付け用のフェンスも販売されているため、擁壁に穴をあけて支柱を埋め込めば設置できるように見えるかもしれません。
しかし、既設擁壁がフェンスの荷重を考慮して設計されているとは限りません。
支柱用の穴あけによって鉄筋を傷つけたり、強風時の水平力によって擁壁が転倒や滑動する可能性もあります。
擁壁へのフェンス後付けは、住人の自己判断で行わず、既存資料や擁壁の状態を確認したうえで設置方法を決めることが大切です。
擁壁へのフェンス後付けは自己判断で行わない

擁壁の設計時に予定されていなかったフェンスを追加すると、当初の構造計算には含まれていない力が擁壁へ作用します。
特に問題になるのが、フェンスが車の衝突を受けたり、強風を受けた場合に生じる水平力です。
盛土規制法では、宅地擁壁の天端へフェンスを直接設置する場合、一般的に天端から高さ1.1mの位置へ、擁壁延長1m当たり1kN程度の水平荷重を作用させて検討するように明記されています。
設計時にフェンスの設置を予定していなければ、擁壁にこの荷重が見込まれていない可能性があります。
後付け用のフェンスでも既設擁壁に設置できるとは限らない

フェンスメーカーは、支柱の間隔、使用する基礎、ブロックの種類や厚さなど、製品ごとの施工条件を定めています。
ただし、メーカーが示しているのは、指定条件で施工した場合のフェンス側の性能です。
設置先となる既設擁壁の転倒、滑動、部材強度まで、メーカーが個別に確認しているわけではありません。
そのため、「後付け可能」や「ブロック上に設置可能」と案内された製品でも、既設擁壁へ取り付けて安全とは限りません。
擁壁にフェンスを後付けすると安全性に影響する
設計時にフェンス荷重が見込まれていない場合がある
既設擁壁の設計図や構造計算書が残っている場合は、フェンス荷重が考慮されているかを確認します。
考慮されていなければ、設置予定のフェンス荷重を追加して再計算し、現在の擁壁形状で成立するか確認が必要です。
造成した施工業者やハウスメーカーに確認を依頼しましょう。
目隠しフェンスは風の影響を受けやすい

目隠しフェンスや遮音壁のような面を塞ぐ形状は、格子状で隙間の多いフェンスよりも風圧を受けやすくなります。
風による水平力が大きくなれば、擁壁を倒そうとする力や滑らせようとする力も増加します。
このような形状では、一般的なフェンス荷重だけでなく、風圧についても検討しなければなりません。
支柱用の穴あけで鉄筋を傷つける可能性がある

鉄筋コンクリート擁壁の天端へ支柱穴をあける場合、内部の鉄筋を切断するおそれがあります。
鉄筋を傷つければ、擁壁の部材強度や耐久性に影響します。
穴あけ前には鉄筋探査を行い、鉄筋位置を避けられるか確認する必要があります。
既設擁壁にフェンスを設置できるか確認する

まずは、擁壁の設計図、配筋図、構造計算書を探します。
元の設計者や施工業者が分かる場合は、フェンスを予定した擁壁なのか確認してください。
フェンス荷重が考慮されていなければ、追加荷重を見込んだ再計算が必要です。
図面がない場合や古い擁壁の場合は、既設擁壁の現況を調査したうえで、直接取り付けられるかを確認する必要があります。
擁壁へ直接取り付けず背面側に独立基礎を設ける方法が無難
擁壁本体への穴あけを避けるなら、擁壁の背面側に独立基礎を設け、フェンスを自立させる方法があります。
この方法であれば、既存擁壁への影響も低く、擁壁の鉄筋やコンクリートを直接傷つけずに済みます。
ただし、独立基礎の荷重や掘削が擁壁へ影響する場合があるため、擁壁のすぐ近くへ無条件に設置できるわけではありません。
擁壁との距離、基礎の深さ、背面地盤の状態を確認して計画する必要があります。
間知ブロック積み擁壁や石積み擁壁への後付けは避ける

間知ブロック積み擁壁などの練積み擁壁は、構造計算を実施せずに所定の形状や上載荷重を前提とした標準的な構造が使われることが殆どです。
そこへフェンス荷重を追加すると、標準構造の適用条件から外れる可能性が高いです。
また、古い石積み擁壁では、構造や施工状態を確認できない場合もあります。
鉄筋コンクリート擁壁以上に判断が難しいため、間知ブロック積み擁壁や石積み擁壁へ直接フェンスを後付けする方法は避けた方がよいでしょう。
まとめ

既設擁壁へフェンスを後付けする場合、「後付け用の商品が販売されているから設置できる」とは判断できません。
フェンス荷重や風圧によって擁壁の安全性へ影響し、支柱用の穴あけで鉄筋を傷つける可能性もあります。
まずは設計図や構造計算書を確認し、必要であればフェンス荷重を追加して再計算を依頼しましょう。
擁壁への直接設置が確認できない場合は、背面側に独立基礎を設ける方法を検討しましょう。
いずれの方法でも自己判断で施工せず、既設擁壁とフェンスの両方を確認できる専門家へ相談することが大切です。
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