擁壁の水抜き穴には、内径75mm以上の塩ビパイプを壁面3m²以内ごとに1個以上設ける必要があります。
ただし、実際は個数だけでなく、配置する高さや排水勾配、背面に設ける透水層まで確認しなければなりません。
この記事では、擁壁の水抜き穴に関する基準と、設計・施工で見落としやすい注意点を分かりやすく解説します。
内径75mm以上の塩ビパイプを壁面3m²以内ごとに1個以上設ける
擁壁の水抜き穴には、内径75mm以上の塩ビパイプを壁面3m²以内ごとに1個以上設けます。
水抜き穴は、擁壁背面にたまった雨水や地下水を前面へ排出し、水圧が擁壁に作用するのを防ぐための設備です。
設置数が不足すると背面の水を十分に排出できず、構造計算では通常考慮しない水圧が擁壁に作用するおそれがあります。
なお、呼び径が75mmであっても、塩ビパイプの種類によって内径が異なります。
設計図や自治体の技術基準を確認し、内径75mm以上を確保できる塩ビパイプを選定してください。
水抜き穴の必要個数は擁壁の見付面積から計算する
水抜き穴の必要個数は、擁壁前面から見た見付面積を3m²で割って計算します。
例えば、擁壁の高さが2m、延長が10mの場合、見付面積は20m²です。
20m²を3m²で割ると6.67個になるため、端数を切り上げて7個以上の水抜き穴を設けます。
擁壁の高さが途中で変化する場合は、各区間の見付面積を求めて合計します。
水抜き穴の個数は、擁壁の延長だけで判断せず、見付面積を基準に算定してください。
擁壁の水抜き穴はどこに配置するのか
水抜き穴の配置は、必要個数を満たしたうえで、擁壁の形状や景観、維持管理のしやすさを考慮して決めます。
壁面全体へ均等に配置するとは限らず、擁壁の下部を中心に配置することも多いです。
景観や維持管理を考慮して下部中心に配置することも多い

擁壁上部に水抜き穴を設けると、排出された水が壁面を長く伝い、水垂れ跡やコケが生じやすくなります。
また、水抜き穴から草が生えた場合、高い位置では除去や清掃が難しくなります。

このため、排水機能を確保しながら、景観や維持管理にも配慮して下部を中心に配置することがあります。
下部を中心に設けなさいという決まりはありませんが、景観や維持管理性も考慮しながら慎重に計画することが重要です。
水抜き穴には2~3%の排水勾配を設ける
水抜き穴は、擁壁背面に浸透した水を速やかに排出できるよう、水平ではなく2~3%程度の勾配を設けます。
勾配が不足すると管内に水や土砂が滞留し、排水性能が低下するおそれがあります。
擁壁前面に向かって下り勾配とする
水抜き穴は、擁壁背面から前面に向かって下り勾配となるように設置します。
施工時には型枠や鉄筋との干渉によって勾配が逆転しないよう、打設前に管の向きと固定状態を確認してください。
背面には吸い出し防止材を設置する
水抜き穴の背面には、透水マットや不織布などの吸い出し防止材を設置します。
吸い出し防止材を設けずに砕石や土砂を直接接触させると、細粒分が水とともに流出し、水抜き穴の閉塞や擁壁背面の空洞化につながります。
擁壁背面には砕石または透水マットによる透水層を設ける
擁壁背面には、浸透水を水抜き穴へ導くため、砕石または透水マットによる透水層を設けます。
透水層がないと擁壁背面に水がたまり、構造計算で考慮していない水圧が作用する恐れがあります。
構造計算書で想定している透水層を確認する
透水層を施工する前に、構造計算書や設計図で砕石と透水マットのどちらを想定しているか確認します。
材料だけでなく、砕石の厚さや透水マットの設置範囲、水抜き穴との接続方法も設計図どおりに施工することが重要です。
砕石と透水マットを変更する場合は構造計算から見直す
砕石と透水マットでは、構造計算で用いる壁面摩擦角が変わります。
壁面摩擦角が変わると計算結果も変わるため、設計で指定されている透水層を現場判断で変更してはいけません。
砕石から透水マット、または透水マットから砕石へ変更する場合は設計者に相談し、変更後の条件で構造計算から見直す必要があります。
よくある質問

擁壁の水抜き穴には何mmの塩ビパイプを使いますか?
宅地擁壁の水抜き穴には、原則として内径75mm以上の硬質塩化ビニール管を使用します。
管は擁壁前面に向かって下り勾配を設け、コンクリート打設時にずれたり、つぶれたりしないように固定します。
擁壁の水抜き穴は何個必要ですか?
水抜き穴は、擁壁の壁面3㎡以内ごとに1箇所以上設けます。
砕石を透水マットに変更しても問題ありませんか?
設計時に砕石を想定している場合、現場判断で透水マットへ変更してはいけません。
砕石と透水マットでは計算条件が変わるため、透水層を変更する場合は構造計算から見直します。
まとめ

水抜き穴は、見た目以上に重要な役割を持っています。
実際に、排水不良は擁壁の変状や倒壊につながる大きな要因の一つです。
設置基準を満たすだけでなく、目的を理解したうえで、排水効果を発揮でき、かつメンテナンス性や景観も踏まえた設置位置を慎重に検討しましょう。
関連記事




コメント