擁壁の基準書を読み込んでも数値の根拠や理論的な裏付けが不十分と感じる
計算ソフトの出力結果に対して自信を持って技術的な説明ができない
擁壁の設計実務において、各種基準書に記載された数値をなぞるだけでは不十分です。土圧の挙動や構造物の安定に関する基礎的な理論を理解していなければ、適切な設計や技術的説明は不可能です。
しかし多くの実務者が基準書を読み込んではいるものの、その根拠となる背景を掴めずに悩んでいます。
そこでこの記事では、基準書の行間を読み解き、擁壁設計を体系的に学ぶためにおすすめの書籍を紹介します。
擁壁設計を体系的に理解するためにおすすめの書籍
擁壁設計を体系的に理解するには、高知県を代表する建設コンサルタント「第一コンサルタント」の社長「右城 猛(うしろ たけし)」さんの著書がおすすめです。
右城氏は土木構造物の中でも特に「擁壁工」と「落石防護柵工」の設計や人材育成において大きく貢献された重要人物です。
擁壁工指針に基づいた目からウロコの擁壁の設計法と計算例
実務者が最も必要とする根拠が記された一冊です。
基準書の各条文が、どのような物理現象をモデル化したものなのかを解き明かしています。
基準書を読み込むだけでは足りない理論的背景を、実務者が理解しやすい言葉で記述しています。
詳細な計算例により、数式の裏にある理屈を視覚的に確認できる構成になっています。
土木構造物設計施工の盲点
計算上は安全なはずだった構造物がなぜ壊れたのかを、豊富な失敗事例を通じて学ぶことができます。
設計と現実の乖離を知ることは、基準書の数値を適切に運用するための判断力を養うことに直結します。
失敗のメカニズムを理解することで、机上の数値だけでは得られない視点が身につきます。
右城猛氏の主な実績
これら書籍の著者である右城猛氏は、現在、第一コンサルタントの代表取締役社長を務めながら、技術の普及に尽力されています。
以下に右城氏の実績の一部を紹介します。
- 改良試行くさび法の考案:L型擁壁の底版上の土の動きを従来の試行くさび法よりも正確に表現可能な土圧理論を考案。
- 愛媛大学の制度改正:右城氏の実績と人柄を評価した大学側が、短大卒でも博士号を取得できるよう大学の制度を変更してまで右城氏に博士号を与えた。
- 若手育成:第一コンサルタント経営の傍ら、擁壁設計の第一人者として全国の技術者の指導に尽力。
【こぼれ話】机上の理論だけで終わらない情熱

右城氏の凄い所は、机上の計算だけではなく実証実験への情熱からも生まれています。
右城氏は仕事から帰宅した後、図面だけでイメージすることが難しいと判断した構造物を下宿先で芋を削って3D模型を作って確認したり、土の中にチョークの粉で層を作ることで土の動きを可視化するなど、机上だけでは終わらせない情熱がありました。
こうした泥臭いまでの観察と検証の積み重ねが、設計実務者が信頼を置く人物としての礎となっています。
優れた技術者の思想に触れる「右城氏の自叙伝」
右城氏の技術に対する姿勢や、これまでの歩みをより深く知りたい方には、右城氏の自叙伝である『土木技術に魅せられて』も是非お読み頂きたいです。
この本には、一人の技術者がいかにして土木技術に魅了され、数々の困難な現場を乗り越えてきたのかが記されています。
単なる技術解説書ではなく、技術者として生きていく上での誇りや、探究心を持ち続けることの大切さを教えてくれる内容です。
設計に悩む若手からベテランまで、仕事に対する「興味と情熱」こそが最も重要であることを再確認できる一冊です。



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