宅地造成地の地盤調査でよく用いられるSWS(スクリューウエイト貫入)試験。
安価で調査速度も早く、1日あたりの調査点数が多いのは大きな魅力ですよね。
しかし、「ボーリング調査と何が違うの?」、「簡易的な調査方法と聞いたけど後で問題が起きたりしない?」と不安に感じる人もおられると思います。
筆者は長年、建設コンサルタントとして地質調査や解析に携わり、地盤材料の評価と設計の両面から現場を見てきました。
本記事では、SWSの意味、試験の流れ、適用範囲を整理し、SWSを過信しないための実務的な判断ポイントを解説します。
結論として、SWSは有用な簡易調査ですが万能ではなく、ボーリング調査の補完として使うのが正解です。
SWSとは

SWSは、地盤にロッドを貫入させて抵抗を測り、地盤の硬さや締まり具合を連続的に評価する原位置試験です。
正式にはスクリューウエイト貫入試験と呼ばれ、住宅地盤の調査で最も広く使われている試験の1つです。
SWSで扱う主な指標は次の2つです。
Wsw(貫入時の荷重)
Nsw(回転による半回転数)
荷重だけで沈むかどうかを確認し、沈まなければ回転で掘進します。この「沈みやすさ」と「回しやすさ」から、地盤の性状を推定します。
SWSの強みは、安価に短時間で複数点を調査できる所です。
特に建物や擁壁の数の多い宅地では、調査点数を増やせるメリットは大きいです。
スウェーデン式サウンディングとの違い

スウェーデン式サウンディングとスクリューウエイトサウンディングは何が違うの?と思われている人も多いと思います。
結論から申しますと「スクリューウエイトサウンディング」と「スウェーデン式サウンディング」は、同じ試験です。
背景として、JISの名称が「スウェーデン式サウンディング」から、「スクリューウエイト貫入試験」に変更された経緯があります。
いずれにせよ「SWS」という略称が変わらないため現場での実務上は大きな影響はありませんが、最新の報告書に「スウェーデン式サウンディング」と書かれていないかは注意しましょう。
具体的な調査方法

SWSは、ロッド先端にスクリューポイントを付けて鉛直に貫入させ、荷重と回転数を段階的に記録していく試験です。
1) 設置と鉛直確認
調査点を決め、ロッドを鉛直に立てて貫入を開始します。鉛直が崩れると摩擦が増え、抵抗が大きく見えるリスクがあります。(正確な数値を出すには調査員の技量が必要になる部分です)
2) 自沈の確認(荷重載荷)
決められた荷重段階でおもりを載せ、その状態で沈むかを観察します。沈下が進む場合は、その沈み方を「自沈」と記録して次の段階へ進みます。
3) 回転貫入(沈まない場合)
最大荷重まで載せても沈まない場合は、ハンドルを回して掘進します。一定貫入量あたりの半回転数を記録し、締まり具合を評価します。
4) 深度ごとの連続記録
深度方向に連続して値が得られるため、層境界の変化が読み取れます。ただし、層境界の「種類」まで特定できるわけではありません。
SWS結果は、換算N値や許容支持力度へ換算されることがあります。ただし、換算式は経験式であり、標準貫入試験のN値とは別物です。
よくSWSから推定される換算N値を用いてcやΦなどの土質定数を推定する技術者がいますが、それはデタラメな手法のため注意しましょう。
簡易試験のため土質や地下水位は解らない

SWSの限界は、土を採取して確認できない点に集約されます。抵抗値は分かっても、土質の確定まではできません。
例えば、砂なのか粘土なのかで沈下や液状化の考え方が変わります。しかしSWSだけでは、土質の判定はどうしても粗くなります。
さらに重要なのが地下水位です。地下水位は沈下、浮き上がり、液状化、施工性に直結します。
SWS孔で地下水位を「測った」と書かれていても、孔壁の崩壊などで不確かになるケースがあります。
また、れき・玉石混じり層や瓦れき混じり盛土は要注意です。ロッドが当たっただけで抵抗が急増し、強い地盤と誤認しやすいです。
SWSは「簡易に地盤の硬軟をつかむ試験」です。地盤の正体を決める試験ではないと理解するのが安全です。
ボーリング調査の補完としての位置づけが正しい

地盤調査には、SWS以外にも「ボーリング調査」があります。ボーリングは採取試料と地下水位を扱える点がSWSと決定的に違います。
住宅規模では、費用や敷地条件の制約でSWSが選ばれやすいです。しかし、重要構造物や造成、擁壁、不同沈下が許されない条件では、ボーリング調査をしたほうが良いでしょう。
実務での整理としては次の通りです。SWSはスクリーニング(当たりを付ける)に強いです。
一方で、次のようなケースはボーリングを検討すべきです。
- 盛土の有無や層厚が重要になる計画
- 地下水位が設計・施工に影響する計画
- 擁壁や造成で、局所的なすべり・沈下を避けたい計画
- SWS結果のばらつきが大きく、説明がつかない計画
また、多くの行政資料や指針でも、SWSは簡便でばらつきが出やすいため、ボーリング調査を補完する使い方が望ましいとまとめられています。
SWSで改良の要否を判断する場合でも、地形・地質図、周辺の既往ボーリング、土地履歴と突き合わせて、判断の根拠を複線化することが重要です。
SWS試験のみで地層線を描くようなことは絶対に辞めましょう。それは熟練技術者でも不可能です。
安価だからといって独り歩きしている現状に懸念

SWSは安価で早いという利点がある一方で、「安いからSWSだけで十分」という誤解が起きやすいです。
特に注意したいのは、先述したように換算N値の数字が一人歩きするパターンです。数字が出ると、精密な試験と同じ扱いをされがちです。
しかし、SWSは装置条件、鉛直性、周面摩擦、地盤の不均質で、結果がぶれやすい試験です。
さらに、SWSは「弱い層の見落とし」に弱い側面があります。薄い軟弱層が挟在しても、測点配置や貫入条件で見逃す場合があります。
SWSを正しく使うための現場ルールを整理します。
- SWSは単独で最終判断に使わず、根拠を組み合わせる
- 盛土・造成・埋戻しの可能性がある土地は特に慎重に扱う
- 地下水位が鍵になる計画は、地下水位を別手段で確認する
- 重要な構造物は、最初からボーリング前提で計画する
地盤は「見えない」ことが最大の難しさです。見えない部分を安価な試験だけで断定する姿勢が、最大のリスクです。
SWSの価値は、ボーリングを否定する点ではありません。ボーリングへつなぐ判断材料を増やす点に価値があると考えます。
まとめ

以上。本記事ではSWS試験について説明しました。
本記事の要点を以下に整理します。
- SWSとは、スクリューウエイト貫入試験の略称として使われる住宅地盤の簡易調査
- スウェーデン式サウンディングとの違いは、主に名称変更による用語混在が原因
- SWSは荷重Wswと半回転数Nswを記録し、硬軟や層境界の変化を推定する
- 土の採取ができないため、土質の確定や地下水位の把握には限界がある
- SWSはボーリング調査の補完として位置づけるのが安全で合理的
- 安価だからSWSだけで断定する運用は危険で、土地履歴や追加調査と組み合わせるべき
SWSは安価で1日あたりの調査点数の多い優れた試験である一方、複雑な土質を完璧に把握できるような万能な試験ではありません。
メリットやデメリットを理解した上で、安心・安全な宅地を造成するために適切に用いるようにしましょう。


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